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牧草の生育不良でと畜頭数が拡大、牛肉輸出量は増加するものの、価格は前年を下回る 豪州農業資源経済局(ABARE)は、9月25日、2006/07年度における第一次産品の需給予測の最新版を 公表した。 これによると、牛と畜頭数は、多くの生産地域で冬期を通じて牧草の生育状況が平年以下であり、今後も平 年以下の降水量が見込まれるため、これまでの予測頭数を上方修正し880万頭(前年度比4.7%増)を見込んで いる。一方、1頭当たりのと畜重量は、牧草の生育状況が悪いことや飼料費が上昇することから減少する。こ のため、2006/07年度の牛肉生産量は、同3.1%増の214万1千トンと見込んでいる。 豪州産牛肉の輸出は、日本および韓国における米国産牛肉の輸入動向によるところが大きいが、今後、ある 程度豪州産から米国産へシフトする。このため、豪州における牛肉価格は、今後下降局面に向かうとみている。 ただし、短期的に見て、どの程度米国産牛肉にシフトするかについては、なお不確定要素が大きいとしている。 豪州産牛肉の日本向け輸出については、今後需要が減少していくとみている。ただし、短期的に見ると、日 本における米国産牛肉の輸入量は、月齢など輸入要件を満たした牛肉の供給量の確保、日本の輸入業者から求 められる牛肉検査に伴うコスト高および消費者の牛肉の安全性に対する高い関心といった3つの要因により制 限される。このため、2006/07年度の豪州牛肉の日本向け輸出量は、前年度比6.2%減の36万4千トンとみてい る。また、輸出価格は、グレインフェッドで4%、グラスフェッドで5%それぞれ下落するとみている。 韓国向けについても、今後需要が減少していくものの、短期的には韓国における米国産牛肉の輸入量は、輸 入要件などにより制限されるため、2006/07年度豪州産牛肉の韓国向け輸出量は、同9%減の11万トンとみて いる。 米国向けについては、同国向け牛肉輸出で競合するウルグアイ産牛肉価格が、2006年後半から低下傾向で推 移すること、また乾燥気象のため米国における経産牛と畜が増加することから豪州産牛に対する需要が低下す る。このため、2006/07年度の米国向け輸出量は、同3.4%減の28万5千トンとみている。 2006/07年度の豪州産牛肉輸出量は、主要輸出国向けが減少するものの、カナダや東南アジア向け輸出が増 加することから、全体として、同2.6%増の91万5千トンをみている。 このように牛肉需給が緩和傾向で推移することから、2006/07年度の肉牛市場取引価格は同9.9%減の290豪 セント/s(255円:1豪ドル=88円)、牛肉輸出価格は、日本向けが同4.7%減、米国向けが同9.7%減といず れも前年を下回るとみている。 生乳生産量はわずかに増加、価格は前年を下回る 生乳生産量は、2006/07年度当初、多くの酪農地域で降水量が不足したものの、前年度比1.6%増の1,025万 キロリットルを予測している。これは、主要酪農地域であるビクトリア(VIC)州北部および西部、ニュ ーサウスウェールズ(NSW)州リベリナ地方で冬期に雨が少なかったものの、VIC州東部およびNSW 州沿岸部においてこの数カ月降雨に恵まれたためである。 乳製品生産量は、チーズが38万5千トン(同3.8%増)、脱脂粉乳が20万8千トン(同1.5%増)、全脂粉乳 が17万トン(同7.6%増)と前年度を上回り、バターについては前年度並みの15万トンを予測している。 乳製品輸出量は、チーズ、脱脂粉乳が、引き続き主要相手先である日本や東南アジア向けの需要が強く、バ ターは、北アフリカや中東における需要に支えられ増加するとみている。 乳製品輸出額は、チーズや脱脂粉乳で前年度を上回るものの、国際価格がバター(同17.4%減)、チーズ (同6.9%減)および脱脂粉乳(同5.7%減)などで下落することから、全体で2.3%前年度を下回るとみている。 生乳の農家販売価格は、こうした国際価格の下落を反映して、同3.7%減の31.4豪セント/リットル(約27.6円) を見込んでいる。 【シドニー駐在員 井田 俊二 平成18年9月28日発】
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