ALIC/WEEKLY


米国農務省、事業者による鳥インフルエンザの自主検査を推進


 米国農務省(USDA)は22日、連邦政府、州政府および関連業界が共同して、家きんの疾病が商業生産用
の家きん飼養施設に広がることを防止する全国家きん改善事業(NPIP)を拡充する暫定規則を公表した。

  この暫定規則に基づき、USDAはNPIPに参加した商業生産用の家きん飼養施設に対し、H5型および
H7型の低病原性鳥インフルエンザの清浄化に要する経費を100%補償することとしている。ただし、自主的
なサーベイランスを行わなかった飼養施設に対しては、清浄化に要する経費の25%しか補償しない。これまで
のH5およびH7型の発生事例においては、補償は州政府により行われており、その補償割合もまちまちであ
った。


高病原性への変異の未然防止と国際基準の順守が目的

  低病原性の鳥インフルエンザは、ヒトの健康には全く影響しないが、H5型およびH7型については高病原
性鳥インフルエンザに変異する可能性があることから、USDAは低病原性インフルエンザの清浄化政策を進
めてきた。

  USDA動植物検疫局(APHIS)のロン・デヘイブン局長は「この事業拡充は、鳥インフルエンザをは
じめとする家きん疾病に対する米国の防御策を強化するものであると同時に、われわれが長期にわたり積極的
に関与してきた国際的な家畜疾病のガイドラインをしっかりと順守していく上でも役立つものである」と語っ
た。

  国際獣疫基準では、現在、すべての国に対してH5型とH7型の発生報告を求めているが、USDAは、今
回の事業拡充により、事業者の自主検査や陽性事例の報告にメリットが生じることから、より確実にこの基準
に沿った対応が可能となるとしている。また、H5型およびH7型鳥インフルエンザのすべての確認事例につ
いて透明性を確保することにより、米国の生産者に対する潜在的な貿易上の不利益が最小化されるとしている。



事業者による自主検査の継続実施が補償の要件

  この事業に参加し、H5型およびH7型の低病原性鳥インフルエンザが発生した際に100%の補償を受ける
ためには、州政府および家きん飼養施設のそれぞれが、USDAの策定した規定を満たす必要がある。以下が、
基本的な三つの要件である;

@ 州政府がすべての家きんについて確定診断を伴うサーベイランス計画を立てること。このサーベイランスは、
   USDA/APHISにより承認された計画に沿って、州の行政組織により実施されなくてはならない。

A 州政府が発生時対策とまん延防止計画を作成し、USDA/APHISの承認を受けること。この計画は、
   H5型およびH7型の低病原性インフルエンザが発生した際にどのような行動をとるかが詳細に記述された
   ものとなる。

B 種鶏および商業生産用の採卵鶏については、各事業者は自主的なサーベイランスを継続的に実施しなければ
   ならない。商業生産用の肉用鶏および肉用七面鳥については、自主的に行われる群ベースでの検査または食
   鳥処理時の検査を実施しなければならない。



商業生産用の家きんを事業対象に追加

  NPIPは、家きん群が疾病に冒されていないことを証明する目的で1930年代に始まった事業だが、これま
で、鳥インフルエンザについては種鶏のみを対象としており、商業生産用の家きんは事業対象となっていなか
った。今回の改正により、NPIPの対象に商業生産用の家きん、具体的には、採卵鶏、食肉用の鶏および食
肉用の七面鳥が加えられることとなった。

  なお、この暫定規則は2006年9月26日に官報に掲載され、同日付で発効しているが、この暫定規則に対する
意見の提出も認められており、その期限は2006年11月27日とされている。



メリーランド州およびペンシルベニア州の事例は低病原性と確定

  USDAは9月12日、メリーランド州の野生のマガモのふん便から分離されたH5N1型のウイルスが、確
定診断の結果、北米型の低病原性であったことを公表した。また、同月23日には、ペンシルベニア州で野生の
留鳥のマガモから分離されたウイルスについても、同様の低病原性鳥インフルエンザであったとする結果を公
表した。

  USDAおよび米国内務省(DOI)は、高病原性インフルエンザの侵入の有無を確認するため、各州およ
び研究機関と連携して、米国全土における野鳥のサンプル採取を継続している。


【ワシントン駐在員 郷 達也 平成18年9月27日発】



元のページに戻る