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欧州委、2005/06年度の生乳供給量を公表


課徴金の総額は約3億8千万ユーロ

 欧州委員会は10月3日、2005/06年度(2005年4月〜2006年3月)のEU25カ国の生乳供給量の速報値を
公表した。これによると、生乳生産割当枠(クオータ)に対する生乳供給量は9カ国で121万9,863トン超過
し、これに伴う課徴金は3億7,706万ユーロ(約565億6千万円:1ユーロ=150円)となる。

 EUでは生乳市場の需給バランスを保つことを目的としてクオータ制度を導入している。クオータには、
生産者が乳業者へ出荷する「出荷クオータ」と、生産者が消費者向けに直接販売する「直接クオータ」があ
り、加盟国はそれぞれ定められたクオータを超過した場合に、ペナルティーとして課徴金が課されることと
なっている。なお、2005/06年度の課徴金単価は、1トン超過につき309.1ユーロ(約4万6千円)となって
いる。
 

出荷クオータは9カ国が超過

 「出荷クオータ」について見ると、EU25カ国では、クオータの割当を受けた生産者は約88万人で、クオ
ータに対する生乳供給量は1億3,553万トンとなり、クオータ合計を約41万5千トン下回る。ただし、国別
では9カ国(チェコ、ドイツ、スペイン、イタリア、キプロス、ルクセンブルク、オーストリア、ポーラン
ド、ポルトガル)でそれぞれのクオータを超過しており、その合計は約121万7千トンとなっている。

 この超過分の90%以上はイタリア、ポーランド、ドイツの3カ国で占められている。最も超過量が多い国
はクオータ超過の常連となっているイタリアで、超過量の半分に当たる約61万トンを占め、前年より約20万
3千トンの大幅な増加となっている。またドイツは、前年の半分となる約20万1千トンの超過となった。

 一方、2004年にEUに新規加盟した10カ国に対して、未使用の「直接クオータ」を「出荷クオータ」へ振
り替えできる特例が認められており、ポーランドはこの措置により課徴金の支払額が減少する見込みとなっ
ている。
 

直接クオータは2カ国が超過

 「直接クオータ」について見ると、EU25カ国では、クオータの割当を受けた生産者は約10万7千人で、
クオータに対する生乳供給量は186万トンとなり、クオータ合計を約53万7千トン下回る。ただし、国別で
は2カ国(スペイン、オランダ)でそれぞれのクオータを超過しており、その合計は2,638トンとなってい
る。





クオータ制度について2008年に検証

 現在のクオータ制度については、2003年6月に合意した共通農業政策(CAP)改革において2014/15年
度まで継続することとなっている。しかしながら、欧州委員会のフィッシャー・ボエル委員(農業・農村開
発担当)は、このクオータ制度について、EU予算の支出抑制に効果があったと評価する一方で、生産者間
の競争が制限されるという負の面があり、制度の存続の是非も含め問題提起を行っている(海外駐在員情報
通巻726号参照)。

 乳業団体の会合における欧州委員会関係者による講演によれば、2008年に行われるCAPの検証において
は、バターに対する市場介入制度などと併せて、このクオータ制度の検証および今後のあり方について議論
を行うとしている。



【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成18年10月3日発】



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