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オーストリア単独でGM作物2品目の制限措置を継続 欧州委員会は10月9日、EUの承認する遺伝子組み換え(GM)作物に関して、オーストリアが同国内 で実施している制限措置の廃止を求める理事会決定を提案した。 オーストリアは、EUが家畜飼料向けを含めたすべての使用を承認したGM作物である遺伝子発現トウ モロコシMON810およびグルホシネート・アンモニウム耐性トウモロコシT25の同国内での利用、販売 をそれぞれ99年6月、2000年5月から禁止している。 欧州委が決定を再提案 加盟国が実施する制限措置に関して欧州委員会は、根拠規則を改正したことから、オーストリアに対し 同措置の再評価を要求したが、同国は2004年1月、欧州委員会に対し、制限措置を引き続き継続するため の追加の情報を提出した。提出のあった情報を、欧州食品安全機関(EFSA)が評価した結果、2004年 7月、同国の評価には新たな科学的根拠となるものがないと結論付けたことから、これに基づき欧州委員 会は2004年11月、両作物はヒトの健康や環境にリスクを与えることはないとし、同国が実施する制限措置 の廃止を求める理事会決定を提案した。しかし、この決定案は、EUの法制委員会に提出したが可決に至 らず、また、2005年6月のEUの閣僚理事会においても不確実な部分があるとして否決された。 これを受けて欧州委員会は、EFSAに本件の再評価を依頼したところ、EFSAは2006年3月、両作 物は、ヒトや動物の健康、環境に負の影響を与えることはないと再び結論付けた。今回の理事会決定の提 案は、この評価に基づき行われたもので、本決定案が閣僚理事会により承認された場合は、同国は本決定 の適用後20日以内に従わなければならない。 なお、欧州委員会は、ほかの6件のGM作物に対する加盟国の制限措置についても、検討していくこと としている。 WTOがEUのGM作物の新規承認凍結などについて判決 世界貿易機関(WTO)の紛争解決機関(DSB)のパネル(紛争処理小委員会)は9月29日、米国、 カナダ、アルゼンチンがDSBに評価を依頼したEUによるGM作物の輸入禁止などの措置に関する報告 書を発表した。DSBは2004年3月、3国からの依頼により本件に関するパネルを設置した。3国からの 依頼によりパネルが評価した事項は、@EUは、98年10月〜2003年8月まで新規のGM作物の承認を凍結 していたこと、AEUによる特定のGM作物に対する承認手続き、BEUが承認したGM作物に対して加 盟国が制限措置を実施すること−で、これらが衛生植物検疫措置に関する協定(SPS協定)に違反して いないかというものであった。パネルは、すべての評価事項について、EUはSPS協定に違反している との結論を下した。なお、@の凍結期間を、99年6月〜2003年8月29日までと認定した。また、Aの同期 間内に申請のあった27件に対し、24件の承認手続きがSPS協定違反であったとしている。 しかしながら、今回のパネルの評価は、あくまで手続きの妥当性を評価したものであり、GM作物の安 全性の検証にまで踏み込んだものとはなっていない。 EUは2004年5月、約6年ぶりに新規GM作物の承認を行っており、凍結していた新規承認もすでに解 決されている。また、加盟国が実施する制限措置についても、前述のとおりオーストリアでの制限措置の 廃止を求める提案をしている。今後、本パネルの判決に対し、EUがどのような対策を講じてくるか引き 続き注目していきたい。 【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成18年10月11日発】
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