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AIの再発確認は2年半ぶり ラオスにおいて7月下旬、高病原性鳥インフルエンザ(AI)の再発が確認された。最初の発生は2004 年の1月で、それから2年半が経過している。今回の発生も前回発生した首都ビエンチャン近郊の採卵鶏農 場での発生であり、ラオス農業省によれば、発生農場を含む3万6千羽余りの家きんが死亡または処分さ れた。今回の再発による家きんの直接の被害額は10万ドル(1,200万円:1ドル=120円)になるとされ、家 きんの処分や薬品などの費用も含めると12万ドル(1,440万円)になるとされている。その後、10月上旬ま で、同国において新たなAI発生の報告はされていない。 同省によれば、今回の対応については、前回の経験が参考になったとしている。発生農場を中心に半径 1キロメートル以内の家きんは全て殺処分し、同5キロメートル以内の家きんについては能動的監視を行 い、この地域からの家きんの搬出を禁止するとともに、ラジオ、テレビそして新聞を使った広報、家きん 移動のチェックポイントの設置、消毒キャンペーンを行ったとしている。 インドシナ半島の交通の要衝となるラオス ラオスはインドシナ半島の内陸に位置し、北は中国に接し、時計回りにベトナム、カンボジア、タイそ してミャンマーに国境を接している。2006年から2007年にかけて、ベトナムのダナン港からミャンマーに 至る東西経済回廊や、中国の昆明からタイのバンコクに至る南北経済回廊が完成の見込みで、いずれもラ オス国内を通過し、完成後には当該地域の経済発展を受け、各種の物資がこれまで以上に活発にラオスを 経由するものと予想されている。 このような中、当地域には口蹄疫(FMD)をはじめとする家畜疾病が存在し、家畜の移動に関しては 各国において規制を行っているものの、密貿易の取り締まりはますます困難になるものと危ぐされている。 この地域の中では、特にタイが鶏肉製品の輸出に力を入れているため、専門家を派遣するなどして周辺国 でのAI発生に備えているが、ラオスもその対象となっている。 人材や対策予算などの不足がAI対策の障害に このようにラオスは当該地域においてAI対策を進める上で地理的に無視できない存在となっている。 また、ラオス政府においても、これまでにAIによる犠牲者が発生していないものの、人命に対する危険 性と、いったんAIが発生した場合の経済的な損失などの影響が大きいことから、AI対策を整備したい として「AI防疫戦略2006-2010」を策定している。 しかしながら、同国は世界銀行の分類でも最貧国の一つとされており、AI対策の障害として経済的に 資金調達が困難なことに加え、獣医師不足や、疾病発生を報告するためのインフラの未整備、監視を行う ための早期診断に必要な機材不足そして農家の家畜疾病に対する知識不足などが挙げられている。政府は、 このことに対して、アセアン諸国とそのほかの近隣諸国とAIに対する協力関係を構築することおよび国 連食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)や日本の独立行政法人国際協力機構(JICA) などと連携して対応したいとしている。 【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成18年10月12日発】
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