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穀物生産は来年度もやや増加見込み 穀物在庫が過去5カ年間で最低となったことを伝えた10月の米国農務省(USDA)報告書や豪州におけ る干ばつによる影響(本紙通巻第740号参照)などから、穀物の国際価格が上昇している。この中で、アル ゼンチンにおける主な穀物の生産動向について報告する。 アルゼンチンでは通常、トウモロコシは9〜11月にかけては種され、3〜7月にかけて収穫される。今年 度の収穫量については、生育期における降雨不足など天候に恵まれなかったこと、前年が記録的な収穫量で あったことなどから、大幅に減少すると見込まれている。また来年度の作付面積については、降雨不足のた め一部では種が遅れていたが、10月に入ってから適度な降雨があったことから、今年度に比べやや拡大する と見込まれている。 大豆は10〜12月にかけては種され、3〜5月にかけて収穫される。大豆栽培はほかの作物と比べ容易であ ること、肥料などの農業資材にかかる経費もトウモロコシと比べ少なくて済むこと、中国をはじめ大豆需要 が拡大していることから、作付面積については順調に伸びており、来年度もわずかに拡大すると見込まれて いる。 小麦は5〜8月にかけては種され、11〜12月にかけて収穫される。これまで降雨不足が続いたものの10月 に入ってから適度な降雨があったことから、生育状況が改善されたと伝えられている。収穫面積のうち53.5 %は「平年並み以上」、20.0%は「やや下回る」、24.8%は「大幅に下回る」、1.7%は「極めて不良」とブエノス アイレス穀物市場は見込んでいる。 注目される政府の対応 穀物の国際価格が上昇しているため、アルゼンチン政府は穀物の国内価格を注視している。収穫を目前に している小麦生産者は、小麦の国内価格の上昇を抑えるため、政府が輸出農産物に課す輸出税(注)の引き 上げなどを行うのではないかと危ぐしている。このため、各農業団体は政府に対し、牛肉の輸出規制の段階 的な緩和、干ばつ被災者への援助と併せて、農産物に課す輸出税の引き下げを要求していると伝えられてい る。 注:2001年の経済危機を契機に、2002年3月から農畜産物などに対して輸出税(本紙通巻第528号参照)が 課されており、例えばトウモロコシ10.5%、大豆10.5%、小麦12.5%となっている。 【ブエノスアイレス駐在員 松本 隆志 平成18年10月25日発】
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