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カナダの大手食品加工会社で豚肉パッカーでもあるメイプルリーフ・フーズ社は10月12日、同社の食肉処理 部門の統合・再編により事業規模を縮小するとともに、今後は付加価値の高い食肉製品や加工品分野に経営資 源を集中することを公表した。 これを受け、再編により食肉処理頭数の拡大が見込まれるマニトバ州の豚肉生産者協議会は今回の決定を歓 迎するコメントを出す一方、今回の決定で大半のと畜場が閉鎖されると見込まれるオンタリオ州などの生産者 団体は肉豚価格の低下への懸念を表明している。 カナダドル高と操業効率の低下が再編の背景 メイプルリーフ・フーズ社は年間販売額が60億カナダドル(6,420億円:1カナダドル=107円)を超えるカ ナダ最大手の食品業者であり、年間販売額の約3分の2を食肉および食肉加工品が占めるパッカーでもある。 10月12日に同社が公表した事業計画によれば、今後、同社は付加価値の高い食肉・食肉加工品および加工食 品に経営資源を集中していく一方で、3年以内に飼料事業、肉豚生産事業およびと畜処理事業を見直し、高付 加価値部門に原料供給を行うために必要な規模まで縮小するとしている。 今回の事業再編は、ここ数年の急速なカナダドル高と世界的なたんぱく質市場の環境変化により、同社のた んぱく質関連事業、とりわけ肉豚生産事業と豚肉処理事業の経営効率が低下し、推定で年間1億カナダドル (107億円)に上る損失を生じたことが要因とされている。 マニトバ州は今回の決定を歓迎 これに対し、マニトバ州の豚肉生産者団体であるマニトバ豚肉協議会は、今回の決定はマニトバ州がカナダ の豚肉産業の中心であることを再認識させるものであるとして、歓迎のプレスリリースを公表した。 これによれば、メイプルリーフ社が同社のすべての生鮮豚肉加工場をマニトバ州ブランドンの一次加工施設 に移す決定を行ったのは、同社がマニトバ州の豚肉産業を重視している姿勢の表れだとしており、この加工施 設が2009年までに2シフトの生産態勢を構築することで、マニトバ州およびブランドンの経済に波及効果を及 ぼすことが期待されるとしている。 オンタリオ州やサスカチュワン州に広がる懸念 一方、マニトバ州に次ぐ豚肉生産量を数えるオンタリオ州の生産者団体は、メイプルリーフ・フーズ社が事 業の見直しを行うことは予測していたものの、今回の決定についての事前協議はなかったとし、現在、この決 定が同州の豚肉産業に及ぼす影響額を明らかにするよう同社に求めているとしている。 また、メイプルリーフ社が新しいと畜施設の建設を公表していたサスカチュワン州では、今回の決定で旧施 設の閉鎖に加えて新施設の建設中止が決まったことにより、肉豚の出荷先がマニトバ州のプラントに変更され ることになり、肉豚の輸送経費負担の増加が見込まれるなど、養豚経営への影響を懸念する意見が出されてい る。【ワシントン駐在員 郷 達也 平成18年10月24日発】
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