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タラナキ地方で年間500トンのプラスチック廃材が発生 タラナキ地方は、ニュージーランドの北島に位置する酪農の盛んな地域である。同地域には約3千戸の農家 (2004年現在)があり、酪農、肉牛、めん羊などの多様な形態の農業が営まれているが、その約75%は酪農家 である。 2005年にタラナキ地方自治体は、同地域の農家を対象として、農村地域における廃棄物処理(生活廃棄物を含 む12のカテゴリー)の実態調査結果を公表した。これによると、農業関連の廃棄物は、農機具用バッテリーや死 亡獣畜などすでにリサイクル・ルートが確立された一部の廃棄物を除き、農家において焼・埋却されるケース が大半であった。また、サイレージの包装などに利用されているプラスチック廃材の年間排出量は、ラップサ イレージで1農家当たり215個分となり、同地域全体で500トンに及ぶと試算している。そして、これらの廃棄 物が、土壌や水といった自然環境に重大な悪影響を及ぼすことから、農村地域における適切な対応と廃棄物の リサイクル利用が必要であると結論付けていた。 サイレージ包装などのプラスチック廃材を保管・回収容器にリサイクル このような中、タラナキ地方では、政府の支援の下、農業資材製造業者が中心となって、サイレージの包装 などに利用されていたプラスチック廃材のリサイクルを目的としたパイロット事業が行われている。この事業 に参加した農業資材製造業者は、酪農家に対し、あらかじめプラスチック廃材から製造された保管・集荷容器 を提供し、酪農家から排出され保管されていたプラスチック廃材を回収、これを原料として保管・回収容器な どにリサイクル利用するものである。 サイレージの包装などに利用されていたプラスチック廃材は、これまで、その大半が農家において焼・埋却 またはそのまま放置・廃棄されており、環境に対して重大な悪影響を及ぼすと指摘されていた。 また、これまで、こういったプラスチック廃材は、土壌、家畜のふん尿、農薬などによる汚染度が高いこと などからコスト面の問題でリサイクルされなかった。 今回のプランが広く実践されると、プラスチック廃材が回収容器により安全に保管・集荷されるとともに、 新たに保管・回収容器などとして完全にリサイクルされることから環境への悪影響が解消されることとなる。 農家は初期費用のほか配送費などを業者に支払 農業資材製造業者は、まず酪農家に対して保管・回収容器とライナー(内側に入れる袋)を配布する。酪農 家は、業者に対し、初回のみ保管・回収容器費用を支払うほか、1枚当たりのライナー費用、さらに満杯にな ったライナーを集荷する費用を業者に支払うこととなる。 なお、酪農家は、その廃棄物の種類、組成などに応じてライナーごとに分別し、その内容をライナーの外側 に明記しなければならない。 業者では、1農家当たり平均でラップサイレージ年間200個分程度のプラスチック廃材の排出を見込んでおり、 その場合、1農家当たり年に1〜2回程度の廃棄物を回収することなる。 この事業では、回収業者、農家およびリサイクル業者にとって、プラスチック廃材の新たな取扱方法を試す とともに、コスト面での実現性も検証されるものと見られる。 なお、このプラスチック廃材のリサイクルが普及すれば、ニュージーランド全体として、将来的に持続可能 な農業の進展に寄与するものと期待されている。 【シドニー駐在員 井田 俊二 平成18年9月7日発】
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