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需要期を前に牛肉不足の懸念(マレーシア)


牛肉自給率は2割、自給率の向上を目指す
 
  マレーシアの食肉の自給率は、2004年の統計によれば豚肉、鶏肉は100%を超えているものの、牛肉は20.0%
となっている。マレーシアはイスラム教を国教としており、国民の約6割のイスラム教徒が豚肉を食べないこ
とや、牛肉の貿易収支が継続して大幅な赤字であったこと(2004年には約6億リンギ)から、マレーシアにと
って牛肉の自給率の向上は大きな課題であった。過去の生産振興の結果、牛肉の自給率は2000年の15.8%から
5年間で20.0%まで向上したものの、2006年3月に公表された第9次マレーシアプランでは、さらなる自給率
の向上と貿易収支の改善のため、2010年の自給率を34%までに高める目標を掲げ、一層の牛肉の生産振興を図
っている。(海外駐在員情報通巻第717号、728号参照)。


インドからの一部の輸入停止で牛肉不足の懸念

 牛肉需要の8割を占める輸入牛肉のうち8割以上をインドからの輸入が占めており、残り2割弱が豪州、ニ
ュージーランド(NZ)を中心とするほかの国から輸入されている。

 マレーシア国営通信によると、5月16日現在、マレーシアには、インドの5企業からの牛肉輸出が認められ
ているが、4月にマレーシア獣医サービス局などによって行われた現地査察の結果、ハラル条件や衛生条件を
満たしてないとして、輸入量の過半を占める企業の2つの食肉処理場からの輸入が停止された。この結果、ジ
ョホール州、トレンガヌ州、クランタン州で牛肉不足が生じている。輸入価格は1トン当たり1,575米ドル
(約18万7千円:1米ドル=119円)から2,000米ドル(約23万8千円)まで上昇しており、数週間後には2,200
米ドル(約26万2千円)に達すると予測する輸入業者もいる。5月には1キログラム当たり7.5リンギ(約254
円:1リンギ=33.9円)だった輸入牛肉の仕入れ値が7月には10リンギ(約339円)まで上昇したものの、店
頭価格に転嫁できない食堂もある。

  これまでは輸入・加工業者が価格上昇分を吸収していたが、9月のイスラム教の断食(ラマダン)月と10月
13日、14日の断食明けの大祭(ハリ ラヤ プアサ)で始まる祝祭シーズンの需要期を前に、さらなる牛肉不
足とそれに伴う小売価格の上昇、牛肉不足に付け込んだ密輸の増加を懸念する声が上がっている。


農業・農業産業相は祝祭シーズンの十分な供給を断言

  こうした懸念に対して、農業・農業産業相は7月25日、インド以外の国からの輸入を増やすよう努力する一
方、国内の輸入業者に対して、輸入停止企業以外からの輸入を増やすよう促したと述べた。これに加えて、こ
の企業が改善措置を行うのであれば8月にも再査察に行く準備があると述べた。こうした措置により、祝祭シ
ーズンには十分な輸入牛肉が供給できるだろうと断言した。
 
  しかしながら、輸入業者には、代替企業の牛肉は高価な割に品質で劣るという声や、インド以外の国につい
ても、豪州やNZからの輸入牛肉は1キログラム当たり18リンギ(約610円)とインド産に比べて高いため、イ
ンド産に替わることは難しいという声もある。


※ 断食(ラマダン)月には、イスラム教徒は日の出から日没まで飲食を断つが、日没後は飲食が許されており、
夕食にはごちそうを食べることが多いことから、食品需要が上がると言われている。






【参考】マレーシアの国別牛肉輸入量(2004年) 
 


         
                       

【シンガポール駐在員 佐々木 勝憲 平成19年8月2日発】



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