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大型バイオ燃料工場が稼働開始(アルゼンチン)


国内最大規模のバイオディーゼル工場が稼働開始

  ブエノスアイレス市から北西に約250キロメートル離れたロサリオ市およびその周辺の町は、アルゼンチンの
穀倉地帯であるパンパの中央に位置するとともに、面するパラナ川を利用して、大豆をはじめとする穀物の輸出
港として栄えている。また、穀物の集積地であることから、多くの搾油工場も配置されている。

  ビセンチン社は、ロサリオ市から北に約20キロメートル離れたサンロレンソ市に位置し、1979年から大規模な
搾油工場の稼働を始めた老舗の企業である。同社はこの8月に搾油工場に併設して、バイオディーゼル工場の稼
働を開始した。同社のバイオディーゼル工場は、現在稼働している工場としては、アルゼンチン国内において最
大規模である。



天然ガスから精製したメタノールを利用

 ビセンチン社では、バイオディーゼルは以下の工程で製造される。

   大豆油 + メタノール → バイオディーゼル + グリセリン

  大豆油は同社で製造した油を利用する一方、メタノールは天然ガスから精製したメタノールを燃料会社から購
入している。

  同工場のバイオディーゼルの生産能力は年間約20万トン(1日当たり640トン)であり、この生産のため、年
間大豆約100万トン(大豆油約20万トンを搾油)、メタノール約2万トンが必要となる。

  アルゼンチンでは、多くのバイオディーゼル工場の建設計画があるが、いずれもバイオディーゼルの製造方法
は、ビセンチン社とほぼ同様であると思われるとのことである。



バイオディーゼルの将来展望は価格次第

 現在トウモロコシの供給国として、アルゼンチンは注目されているところである。しかし、大豆はトウモロコ
シと作付けが競合する作物であるため、大豆を利用したバイオディーゼルの将来展望などについて、当機構ブエ
ノスアイレス駐在員事務所がビセンチン社のブシャッチ氏に伺った。

(質問)製造したバイオディーゼルは、どこに供給しているのか。

(ブ氏)バイオディーゼルの工場売渡価格は1リットル当たり約0.8米ドル(93円:1米ドル=116円)であるこ
        とに対し、アルゼンチン国内の軽油価格は1リットル当たり約0.6米ドル(約70円)であることから、
        現在はすべて米国輸出向けとしている。このため、当社の輸送トラックは自社製バイオディーゼルを利
        用していない。(注:現在の米国ワシントン近辺のディーゼルの小売価格は約0.8米ドル)

(質問)バイオディーゼルの将来展望を、どうみているか。

(ブ氏)当社は植物油の搾油に長く携わり、植物油を知っている企業であるからこそ、大型ディーゼル工場を立
        ち上げることができた。今後の植物油とバイオディーゼルの価格動向次第では、バイオディーゼル工場
        を閉鎖することもあり得る。大きなリスクがあるので、一定規模以上の企業でないと参入は難しいので
        はないか。

  アルゼンチンでは、バイオエネルギー利用促進に関する法律(法律第26,093号、2006年5月12日付け)に基づ
き、2010年1月から国内で販売されるディーゼル油ならびにガソリンの中に、5%以上のバイオ燃料が含まれて
いることが義務付けられることとなっているため、国内需要の増加も見込んでいるとは思われるが、「価格動向
次第では、バイオディーゼル工場を閉鎖する」と考えている潔さには驚かされた。しかしながら、同社の敷地を
見ると、バイオディーゼル工場一つ分の空地があり、状況次第では同能力の工場をすぐに立ち上げることができ
るしたたかさも持ち合わせていた。




【ブエノスアイレス駐在員 松本 隆志 平成19年8月22日発】

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