ALIC/WEEKLY
祝祭シーズンの食料品の価格統制制度 イスラム教徒のマレー系、中国系、ヒンズー教徒のインド系といった多民族で構成されるマレーシアに は、それぞれの宗教の暦に基づき祭日が設定されている。今年の暦では、2月18日、19日が中国正月、10 月13日、14日が9月に始まるイスラム教徒のラマダン(断食)明けの大祭、11月8日がヒンズー教徒の祭 典となっている。 祝祭シーズンには食料品の需要が高まるため、不正に価格を引き上げる業者が現れないよう、同国の国 内取引・消費者行政省(MDTCA)は、1946年物価統制法に基づき特定の食料品について祝祭シーズン の上限価格を定めるとともに価格監視を行っており、違反者には罰金や懲役といった罰則がある。また、 昨年までは小売価格にのみ上限価格が設定されていたが、今年の中国正月から、卸売価格にも上限価格が 設定されている。 9月からの祝祭シーズンの鶏肉監視価格は実施直前に修正 MDTCAは9月5日、17品目の食料品について、9月13日〜10月20日、11月1日〜15日の祝祭シーズ ンに適用される上限価格を発表した。上限価格は輸送コストなどを勘案して地域別に定められるが、全品 目数のうち約50%は昨年と同程度、約26%は上昇、24%で下落と設定された。このうち鶏肉(標準品、脚、 頭、内臓付き)については、首都クアラルンプールを含む半島部での小売価格は1キログラム当たり5.6 リンギ(約180円:1リンギ=32.2円)とされた。これは、今年2月の中国正月の1キログラム当たり5.4 リンギ(約174円)に比べると3.7%の上昇だが、前年同期の1キログラム当たり6.0リンギ(約193円)に 比べると6.7%下落している。 この発表を受けて、マレーシア畜産農家協会連合(FLFAM)は、この上限価格では昨今の飼料価格 の高騰による生産コストの増加を補えず、養鶏業界が大打撃を受けるとして、6,000戸の養鶏農家を代表 して国内取引・消費者行政大臣に対して上限価格を見直すよう書簡を送った。また、市場では、卸売価格 がキログラム当たり5.5リンギ(約177円)程度であることを理由に、6.2〜6.5リンギ(約200〜209円)で 販売されていた。 こうした状況を踏まえ、MDTCAは価格監視の前日である9月12日、農業・農業関連産業省獣医サー ビス局と生産コストについて検討した結果、鶏肉の上限価格を6.0リンギに戻すと発表した。 また、価格監視はどうしても小売価格中心になることから、MDTCAは、卸売業者の上限価格(5.4 リンギ(約174円))の順守を図るため、鶏肉の取引に当たっては領収証を作成し、卸売業者が上限価格 を順守しない場合は通報するように呼び掛けた。 上限価格による価格統制には限界があるとの声も MDTCAは、上限価格を定めた品目については、祝祭シーズン中の価格上昇や需給の混乱はなかった とし、海外駐在員情報通巻第778で報じた輸入牛肉(水牛肉)の不足も見られなかったとしている。しか しながら、消費者団体からは、鶏肉の価格統制品目が丸どりだけであり、スーパーマーケットなどで売ら れているモモ肉やムネ肉、手羽といった部分肉は対象となっておらず、小売価格の上昇が見られることか ら、こうした部分肉も対象として欲しいとの声がある。また、価格統制品目ではない乳製品や小麦粉など の品目については小売価格が上昇しており、上限価格による価格統制の限界を指摘する声もある。 【シンガポール駐在員 佐々木 勝憲 平成19年11月29日発】
元のページに戻る