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2007年の10大ニュース 《シドニー駐在員事務所》                              井田 俊二、  横田 徹


1.2年続けての干ばつで、農畜産業へ大きな影響(豪州)

  豪州では、2006年に「100年に1度」といわれる厳しい干ばつとなったが、2007年も豪州南東部を中心に2年
連続の干ばつとなった。特に9〜10月の降水量が少なく、畜産農家では、干ばつによる飼育環境の悪化、また、
飼料穀物価格の上昇により、家畜のとう汰などの対応を余儀なくされている。この結果、家畜市場での取引頭数
が大幅に増加する一方、取引価格は前年を下回る水準で推移している。特に豪州の食糧生産の約40%を占め、か
んがい農業地域であるマレー・ダーリング集水域では、水割当率が低下し、酪農や果樹・園芸作物、米作などへ
の影響が著しい。豪州連邦政府は、干ばつの長期化に対応して9月に相次いで追加支援策を打ち出しており、
2001年からの干ばつ対策費用は総額で28億豪ドル(2,800億円:1豪ドル=100円)に達している。


2.牛乳・乳製品需給ひっ迫などにより生産者乳価が大幅な上昇(豪州)

 豪州の乳業各社は、乳製品国際価格の上昇を背景に、2007/08年度の生産者乳価の当初価格を一斉に大幅に引き
上げた。豪州の生乳生産量の約6割を占めるビクトリア(VIC)州の乳業会社では、1リットル当たり40豪セ
ント(40円)を提示するなど、前年度を30%も上回る大幅な引き上げとなった。その後の牛乳・乳製品需給は、
乳製品国際価格が依然高水準で推移する一方、豪州国内の生乳生産量が前年度をさらに下回る水準で推移してい
ること、飼料不足などを背景として飼料価格が大幅に上昇し高水準で推移していることなどから、依然としてひ
っ迫状況が続いている。このため、乳業各社は相次いで生産者乳価の再引き上げを発表しており、生乳確保のた
めの乳価競争は激しさを増す状況となっている。


3. フィードロット飼養頭数、飼料穀物価格高などを反映して大幅に減少(豪州)

  豪州フィードロット協会(ALFA)は10月15日、四半期ごとの全国フィードロット飼養頭数調査結果につい
て発表し、2007年9月末時点の総飼養頭数は68万頭と前回調査(2007年6月末)比で21.8%減、前年同期比では
22.3%減といずれも大幅に落ち込んだことが明らかとなった。また、フィードロット稼働率も59.1%と、史上2
番目の低水準に落ち込んだ。この要因についてALFAでは、2006年の干ばつ以降、豪州国内の飼料穀物価格が
高水準となっていること、また、豪ドル高に加え、国内外取引価格が生産コスト高に応じて引き上げられる環境
にないことなどから、フィードロット産業の経営環境がかつてないほど悪化したためとしている。同協会では、
引き続き、フィードロット飼養頭数は減少する状況にあると予測している。


4. 連邦政府、水資源改革を提案(豪州)

  豪州連邦政府は1月25日、干ばつなどで生じる農業の水不足問題を解消するため、包括的対策として水資源改
革の提案を行った。この計画は、水資源の効率的な活用を図るため、全国のかんがい農業地域における基幹施設
整備のほか、豪州最大のかんがい地域であるマレー・ダーリング集水域における水利権の買い上げおよび連邦政
府による水資源の管理などを柱とし、10年間にわたり100億5千万豪ドル(1兆50億円)の資金を投入すること
としている。同政府は提案後、関係各州と協議を行ったが、VIC州だけは、この計画に不参加との立場を崩し
ていない。


5.ニュージーランド大手乳業、2010年の株式上場計画を提案

  ニュージーランド(NZ)乳業大手フォンテラは11月15日、現在、同酪農協が保有するすべての資産および負
債を新たに設立する別会社に移行し、早ければ2010年半ばに新会社の株式をNZ証券取引所に上場する計画を提
案した。新たな資本の導入により豊富な資金を安定的に調達し、国際市場でさらなる競争力を確保することを目
的としている。今後、この計画が実現するまでには、出資者である酪農家による2度の投票において承認を得る
必要がある。現在、同社では、1回目の投票が行われる2008年5月までの間、出資者である酪農家に対する説明
会を開催している。


6.ビクトリア州、ニューサウスウェールズ州がGMカノーラ商業栽培の解禁を決定(豪州)

  ビクトリア(VIC)州およびニューサウスウェールズ(NSW)州政府は11月27日、遺伝子組み換え(GM)
カノーラの商業栽培全面禁止措置を解除することを公表した。この禁止措置は、2003年にVIC州およびNSW
州の州法で定められ、その適用期限が2008年2月および3月までとなっていることから、それぞれその後の対応
について検討がなされていた。今回の決定により、両州の生産者にとっては、来年からGMカノーラの作付けが
解禁されることとなる。この決定に対し、全国農業者連盟など農業団体は支持する意向を表明する一方で、一部
の大手食品会社やスーパーマーケットからは、GMカノーラの分別の徹底について懸念する意見がある。なお、
2005/06年度の豪州産カノーラ輸出量は88万4千トンで、うち37万トンが日本向けとなっている。


7.ニュージーランドで空前の酪農ブーム

  NZ乳業大手フォンテラは7月25日、2006/07年度の最終生産者乳価について、前年度比8.8%高の乳固形分キ
ログラム当たり4.46NZドル(388円:1NZドル=87円)としたことを公表した。この結果、同年度にフォンテ
ラが1万1,600戸の生乳供給酪農家に支払った乳代総額は、56億NZドル(4,872億円)に達し、一戸当たりの平
均支払額は48万3千NZドル(4,202万円)となった。また、2007/08年度の暫定乳価については、引き続き乳製
品国際価格が高水準で推移するとの見通しから、5月には同5.53NZドル(481円)、8月には同6.40NZドル
(557円)と再度引き上げを公表しており、NZでは空前の酪農ブームとなっている。このため、酪農と対照的に
価格低迷やNZドル高で経営難に陥っている羊肉農家などでは、酪農への経営転換が進んでいる。


8.クオータ品目に対する独占輸出権の見直しを開始(NZ)

  NZ政府のアンダートン農相は2月26日、現在、乳業会社フォンテラのみに付与している乳製品クオータ品目
の独占輸出権について、廃止を含めた協議を開始することを発表した。NZでは、2001年のフォンテラ設立に際
し、それまで乳製品の独占輸出権を有していたニュージーランド・デイリー・ボード(NZDB)の機能を廃止
したが、その際制定した法律(酪農産業再編法:DIRA)に基づき、クオータ品目については、向こう6年間
にわたりフォンテラに独占輸出権が与えられることとなった。クオータ品目の独占輸出権については、2007年6
月から順次、終了し、2010年12月までにすべてのものが終了となる。これにより、前身のNZDB時代から残っ
ていた唯一の既得権が終わりを迎えることとなる。


9.NSW州でバイオ燃料義務化、飼料穀物に影響も(豪州)

  NSW州では、他州に先駆けて10月1日から新たに州内の一次卸売り業者から販売、または州内へ供給される
ガソリンに対し、総量の2%をエタノールとする内容を盛り込んだ「バイオ燃料法」が施行された。一方で、豪
州の穀物生産は、2年続けての干ばつにより、2006/07年度の大幅な減少に続き、2007/08年度冬穀物生産も平年
を大きく下回る水準になることが見込まれている。今後、バイオエタノール原料として、穀物利用の拡大が見込
まれており、飼料穀物価格の上昇に悩む養豚、肉牛肥育、鶏卵、鶏肉などの生産者にとっては、大きな悩みの種
が増えることになった。


10.牛肉生産最大手をブラジル資本が買収、業界はおおむね肯定的な反応(豪州)

  豪州では5月末、同国最大の牛肉生産業者であるオーストラリア・ミート・ホールディングス(AMH)社が、
南米最大でブラジルに拠点を置く食肉処理業者JBS社に買収された。これは、JBS社が、AMH社の親会社
である米国の大手食肉処理・加工製造会社スイフト社を傘下に収めたことによるもの。豪州の食肉業界の一部か
らは、世界最大の牛肉輸出国であり、また、牛肉の輸出競合国であるブラジル企業の参入に対し、警戒感を募ら
せる声が出ているものの、肉牛生産者、業界団体などの大部分からは、業界の活性化につながるものとして、お
おむね肯定的な反応が示されている。

 


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