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2007年の10大ニュース 《ワシントン駐在員事務所》            郷 達也、  唐澤 哲也


1.米上院で新農業法の審議が遅れ、年内の成立は困難に

  米国では、2002年農業法の後継となる新農業法の制定に向け、上院での議論が続いている。下院農業法案は7月27日
に本会議を通過したのに対し、上院農業法案は10月25日に農業委員会の承認を得たものの、多くの修正提案が出された
まま本会議の審議に入ることが出来ずに、感謝祭休会明けの12月を迎えることとなった。休会明けの与野党折衝を経て、
12月7日から農業法の本会議審議が始まっているが、作物補助金の給付上限の引き下げなど多くの論点が残されており、
年内に上院農業法案が本会議を通過しても、両院協議会を経て策定される包括農業法案が最終的に両院の承認を得られ
るのは年明けになるとの見通しが広がっている。



2.米国農務省、2007年度のトウモロコシ生産量は過去最高水準と予測

  米国農務省(USDA)によると、2007年度(2007年9月〜2008年8月)のトウモロコシ生産量は、作付面積が大幅
に増加したことなどにより、前年度比25%増の131億6,800万ブッシェルと過去最高水準になるものと見込まれている。
一方、消費仕向量も、エタノール向けが大幅に増加したことなどにより、需要全体では前年度に比べ13%程度増加する
もの(126億9千万ブッシェル)と見込まれている。

  なお、本年1月には、1ブッシェル当たり4ドル(444円:1ドル=111円)を上回ったトウモロコシのシカゴ相場は、
夏場まで下落基調で推移したものの、9月以降再び上昇局面に転じ、生産増にもかかわらず高止まりしている。



3.米国、新たな再生可能燃料の使用基準に関する議論が活発化

  アメリカ食肉協会(AMI)、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)、全国食肉協会(NMA)など米国の畜産7
団体は10月12日、米上下両院の指導者に対し、上院のエネルギー法案に盛り込まれた再生可能燃料使用基準(RFS)
の引き上げに反対する書簡を送付した。これは、本年6月に可決された上院エネルギー法案に、現行のRFSの引き上
げ(現行の2012年までに年間75億ガロンを、実質的に2015年までに年間150億ガロンへ引き上げ)が定められる中、原
油価格の急騰などを受け、早ければ年内にも、上下両院で調整された包括エネルギー法案が議論される可能性が出てき
たためである。

  このような中、下院は12月6日、現行のRFS水準の大幅な引き上げを盛り込んだ包括エネルギー法案を可決してお
り、2009年からのRFSの引き上げはほぼ確定的な状況となっている。



4.米国農務省、カナダ産輸入生体牛などの月齢制限を緩和

  USDA動植物検疫局(APHIS)は9月14日、カナダ産の生体牛や牛肉の輸入を30カ月齢未満のものに限定して
いた規則を改正し、生体牛の輸入については月齢要件を99年3月以降生まれに引き上げるとともに、牛肉については輸
入月齢制限を撤廃することを公表した。この最終規則は同月18日付けの官報で公表され、11月19日から施行されている。

  一方、この最終規則の公表を受け、主要畜産団体の間では、食肉の生産・流通業界の太宗は容認の姿勢を見せていた
のに対し、全米生乳生産者連盟(NMPF)からは、初妊牛の輸入増加の影響を問題視するなどの声が上がっていた。
なお、一部の生産者団体は、輸入の差し止めを求めて、連邦地裁への提訴を行っている。



5.生産過剰により米国養豚経営の収益性は低下

  USDA全国農業統計局(NASS)が9月29日に公表した豚飼養動向調査結果によると、2007年9月1日現在の豚
総飼養頭数は、前年同期比2.8%増の6,465万頭と、80年以降最大の結果となった。これによると、米国の豚肉生産は、
米国内の肉豚生産の増加に加え、カナダからの生体豚輸入の増加により、2008年まで継続的に増大する一方、肥育豚価
格は、本年第4四半期以降、軟調に推移するものと見込まれている。この結果、業界内では、これまで長期にわたり収
益を確保してきた養豚経営も、同四半期以降は、経営の悪化は避けられないものと考えられている。  



6.米国の酪農生産者、自主基金による生乳生産削減プログラムを実施

  米国において酪農家の拠出金により運営される酪農協共同基金(Cooperative Working Together:CWT)は、2005
年以来4回目となる「牛群とう汰プログラム」を実施した。この事業は、本来、搾乳牛のとう汰により生乳生産量を削
減し、価格の上昇を図るものであるが、本年当初以降生産者乳価が上昇局面に転じる中、4回目が実施された背景には、
飼料コストの急騰などにより酪農経営が悪化していたことが要因となったものと考えられる。今回の事業により、本年
6月までに、全米の333農場で52,783頭の搾乳牛がとう汰された結果、10億ポンド相当の生乳生産が削減された。

  なお、米国の生産者乳価は、本年3月以降、国際的な乳製品需要の高まりなどを背景に、前年同月を大幅に上回る水
準で推移している。USDAによると、2007年全体では100ポンド当たり18.95〜19.05ドル(キログラム当たり46〜47円)
(2006年は同12.90ドル(同32円))に達するものと予測されている。



7.米国農務省、エタノール副産物の飼料利用状況を公表

  USDA/NASSは6月29日、エタノール副産物の家畜飼料利用の状況をまとめた報告書を初めて公表した。これ
によると、2006年において、酪農経営の38%、肉用牛肥育経営の36%、肉用牛繁殖経営の13%、養豚経営の12%が何ら
かのエタノール副産物を飼料として給与しており、また、総じて規模の大きい経営体ほど積極的に利用する傾向にある
ことが明らかになった。また、副産物の購入先は穀物会社や農協が主流であり、肉用牛肥育経営を除き、エタノール工
場からの直接購入は少ないという結果が示された。



8.米国、韓国とのFTAに合意も米議会による批准は難航

  米国通商代表部(USTR)は4月2日、ソウルで行われていた米韓両国政府によるFTA交渉が、同月1日に合意
に至ったことを公表した。USDAによると、農業分野については、同国向け農産物輸出額の約3分の2相当に対する
関税が直ちに撤廃されるほか、牛肉、豚肉および鶏肉などについても段階的に関税が撤廃されることとされている。し
かし、この合意を受け、米上院財政委員会のボーカス委員長などは、牛肉の完全輸入解禁なくしてFTA批准なしとの
立場を明確にするなど、現段階では、その議会承認に向けた見通しは立っていない。

 なお、米韓FTAのほか、貿易促進権限(TPA)が7月1日に失効する以前に合意されていたペルー、コロンビア、
パナマとのFTAのうち、ペルーとのFTAについては、下院が11月8日、上院が12月4日にそれぞれの本会議におい
て承認しており、12月14日に米大統領が署名を行う予定となっている。



9.カナダ政府、濃縮乳たんぱくの輸入制限に向け関係国と交渉へ

  カナダ政府は2月7日、NZやEUから輸入され、主にチーズなどの乳製品の原料として使用される濃縮乳たんぱく
(MPC)の輸入増加を制限するため、ガット第28条に基づく譲許表の修正を認めるよう関係国との間で代償交渉を行
っていく考えを明らかにした。これを受け、カナダの酪農家団体は歓迎の意を表明した一方、最大のMPC輸出国であ
るNZ政府は強い懸念を表明した。

  また、これに併せ、ストロール農務食品相は、カナダ食品検査庁(CFIA)に対してチーズの成分規格を設けるよ
う求めていくことも明らかにした。現在、CFIAはコーデックス基準などの国際基準を踏まえ、乳製品の製造技術革
新の状況を考慮しながら、具体的な規格について検討を進めており、その動向について米国内の乳業者の関心が高まっ
ている。



10.メキシコ、軟調な豚肉価格が需要を後押し

 USDA海外農業局(FAS)が10月1日に公表したメキシコの2008年における豚肉の需給見通しによると、2008年
の豚肉生産は、生産規模の拡大に伴う品質の向上や、2007年初頭以降下落基調となっている豚肉価格が需要を促進する
ことから、前年比5%増の125万トンと見込まれている。同省によると、豚肉卸売価格(メキシコシティ)は2007年初
頭以降、穀物価格高により肉豚の生産コストが増大し、生産者の早期出荷が加速したため、前年同月を大幅に下回って
推移しているとされている。
 
  このような中、メキシコの生産者団体は、米国産豚肉の輸入制限に向けた政府への働きかけを強めており、米国内の
輸出関係者はその動向を注視している。





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