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豪州連邦政府、水資源確保のための全国計画を提案


水資源の効率的な管理に主眼
 
 豪州連邦政府のハワード首相は1月25日、干ばつなどに伴う農業における水不足問題の解消を目的とし
て、水資源確保のための全国計画という包括的な対策の提案を行った。この対策費として、10年間にわた
り100億5千万豪ドル(約9,447億円:1豪ドル=94円)という大規模な資金を投入することとしている。

 豪州のかんがい農業地域では、基幹施設の老朽化などに伴う非効率な水資源利用や、同国最大のかんが
い地域であるマレー・ダーリング集水域における不適切な水資源管理が指摘されている。この計画では、
こういった問題を解決することにより、水資源の効率的な活用を図り、持続可能な農業を推進することと
している。


かんがい農業用基幹施設の近代化などの整備

 この計画では、対策として10項目を掲げている。主なものとして、まず、効率的な水資源利用を図るた
め、全国のかんがい農業用基幹施設における老朽化施設の更新や拡充といった整備を行うこととし、その
費用として58億8千5百万豪ドル(約5,532億円)を充当する。現在利用されている老朽化した開放型コ
ンクリート水路では、水の蒸発や漏出および管理上の損失量が大きく、利用されぬまま失われる水量は全
体の10〜30%に及ぶとされている。このため、農場内外における老朽化施設の更新や水路のパイプライン
化など水資源の効率的な利用を目的とした施設整備を行う。併せて、適切な水量管理を行うため、農場入
り口などにおける水量計の改善、河川や集水場における水資源管理の改善を図ることとしている。


連邦政府によるマレー・ダーリング集水域の管理および水利権買い上げの実施

 次に、豪州かんがい用水量の85%を占めるマレー・ダーリング集水域において、農家などが保有する水
利権の買い戻し費用として、30億豪ドル(約2,820億円)を充当する。同地域では、一部の地域において、
実際に利用可能な水量を超える水利権の割当や水の利用が行われており、こういった不適切な水資源の管
理が、水不足問題や環境問題の深刻化を助長していると指摘されている。このため、連邦政府が農家など
の保有する水利権を買い戻し、利用可能な水資源に応じた配分を行うとしている。

 また、この計画では、同地域における水資源の管理を州政府から連邦政府に移管することとしている。
これまで、同地域における水資源の管理は、クイーンズランド(QLD)州、ニューサウスウェールズ州、
ビクトリア州および南オーストラリア(SA)州の4つの州でそれぞれ行われていた。このため、同地域
全体として水利権の登録・管理が行われていないこと、州ごとに水資源の管理システムが異なっているこ
となどから、同地域全体として効率的な水資源の管理が行われていないとしている。


計画の実施に向けて、今後の調整が必要
 
 このほか、計画では、全国ベースの水資源データや予報に関する情報の提供など、水資源に関する情報
の充実を図るため、4億8千万豪ドル(約451億円)を充当する。さらに、専門調査組織を立ち上げ、南
部の地域と比較して降水量に恵まれている北部豪州地域における水資源や国土の状況およびその利用可能
性について、検討することなども盛り込まれている。

 この計画の詳細については、まだ明らかにされていないが、特にマレー・ダーリング集水域の取り扱い
に関する提案に対しては、特にQLD州およびSA州から慎重な見解が表明されている。このため、今回
提案のあった計画については、今後、連邦政府および州政府において調整が必要となる。



【シドニー駐在員 井田 俊二 平成19年2月1日発】




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