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EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会は2月6日、イギリスでの高病原性鳥インフルエンザ(HPAI) の確認に伴いイギリス政府が設定した防疫区域、監視区域およびそれらを取り囲む制限地帯の設定について承認し た。これにより、家きんにおけるHPAIの感染を確認した時点で同国政府が設定した制限地帯について、委員会 決定に規定する条件を満たし、発生地から十分な範囲が設定されていることを全加盟国が認めたこととなる。なお 欧州委員会は、今回のイギリス政府による素早い地域設定やその地域ごとの疾病対策の実施に対し「十分に満足で きるものである」と評価している。 家きんでのHPAI確認後のイギリス政府の対応 イギリスでの動物衛生管理の主管当局であるイギリス環境・食糧・地域開発省(DEFRA)は2月1日夕方、 東部サフォーク州の15万9千羽の七面鳥を飼養する養鶏場の1鶏舎で異常が見られるとの獣医師の通報により、当 該農場を立入禁止にするとともに、ウイルスの同定を進めた。 この結果、翌2日の夕方にはH5型の高病原性ウイルスによる感染と確認され、さらに翌3日の午前中にH5N 1型によるものと同定された。 これにより、DEFRAは当該農場を中心に半径3キロメートルの防疫区域、同半径10キロメートルの監視区域 を設定し、当該農場のすべての七面鳥の殺処分、移動制限などを課した。さらに、これら高リスク地域(エリアA) の周辺のサフォーク州東部とノーフォーク州東南部の計2,090平方キロメートルを、疾病フリー地域との緩衝地帯と なる制限地帯(エリアB)に設定し、家きんの屋内飼育などを課した。同国のこの制限地帯以外で飼養される家き んや生産される家きん肉などについては移動制限が適用されず、ほかのEU加盟国への移送は可能となっている。 なお、DEFRAによれば、7日現在で、ロシア、韓国、日本など12カ国が、イギリスからの生きた家きんや家 きん製品の輸入を停止しておりさらに増える見込みである。これについて欧州委員会は、制限地帯以外の家きんな どについては、早期の輸入解禁を求めていくとしている。 また、6日のフードチェーン・家畜衛生常設委員会におけるイギリス政府からの報告によると、感染源について は、1月下旬にHPAIが確認されたハンガリーからのものとは異なり、カモメなどの野鳥がウイルスを運んでき た可能性が高いとしている。併せて、同国では今回のHPAIの発生以降、家きん肉の消費の減退は見られていな いと報告している。 加盟国に対しさらなる警戒を呼びかけ 欧州委員会のキプリアヌ委員(保健・消費者保護担当)は2月5日、イギリスでのHPAIの発生確認を受けて の会見で、「おそらく、今後もHPAIが確認されるだろう」との見方を示し、加盟国に対し引き続き警戒を呼び かけた。 また、2月6日のフードチェーン・家畜衛生常設委員会でも、欧州委員会が加盟国に対し、鳥インフルエンザ (AI)のリスク低減のために実施するサーベイランスや侵入・拡大防止対策の見直し、渡り鳥との接触の可能性 の高い地域での屋内飼育の実施などを要請した。また、イギリスにおけるAIワクチンの接種についての議論も行 われたが、現時点では、すべての家きんを対象とした広範囲なワクチン接種の実施は適切ではないとの結論に至っ た。 【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成19年2月7日発】
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