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トウモロコシの自給体制を目指す(インドネシア)


トウモロコシ需要の主体は飼料

  インドネシアの国民の9割近くはイスラム教の信者で、食肉消費の中心は家きん肉などとなっている。その
ため、配合飼料生産の9割は養鶏用であり、その原料の約5割はトウモロコシのため、飼料原料の中でもトウモ
ロコシは重要な位置を占めている。

 同国におけるトウモロコシの生産の概況は表のとおりであるが、2006年の需要に関しては、飼料向け494万
トン、食糧421万トンおよび食品工業向け270万トンの合計1,185万トンとなっている。一方、2006年の生産量
は1,214万トンとなっており、数値上は自給を達成する見込みとなっているが、飼料原料用として40万トンの
輸入がなされた。また5万トンの輸出があったとされている。



飼料生産は徐々に回復

 同国飼料生産者協会(GPMT)によれば、鳥インフルエンザ(AI)が長期化しているものの、消費者に
は家きん肉を食べてAIに罹患(りかん)しないことが徐々に理解されてきており、消費の回復に伴って飼料
の需要が戻りつつあるとし、2006年の後半には前年に比べて増加した可能性があるとしている。同協会は、飼
料原料のトウモロコシがバイオエタノールの原料として需要が増していることや、国際商品として原産地価格
や為替の変動などにより輸入価格が高騰して調達が困難になることを避けるため、できるだけ国産のトウモロ
コシを使用したいとしているが、供給が季節によって偏るため、不足時には輸入が避けられないとしている。



政府はハイブリッド種購入に補助金

 一方、政府は、トウモロコシの自給を達成するには何よりも生産量の増加が必要とし、2007年から多収が望
めるハイブリッドの種子購入に対して補助金を交付するとしている。予算は1兆7千億ルピア(170億円:1ルピ
ア=0.01円)で、補助金はハイブリッド種を購入した農家集団に対して、割引券の形で交付され、通常、1キ
ログラム当たり3万〜4万ルピア(300〜400円)するハイブリット種子購入費用の25〜50%を補助するとして
いる。これにより、2007年には自給を達成する計画により、飼料および食料での消費が大きく増加するとし、
生産目標を1,500万トンとした。



保管と流通にも課題

 このように政府は生産を増加させることにより自給を達成しようとしている。しかしながら、生産物の歩留
まりを100%とした場合、2006年の生産と需要を比較した数値上の自給は達成されており、GPMTが指摘する
不足は発生しないこととなるが、実際は生産されたトウモロコシが乾燥や保存施設の不足により廃棄されるこ
とが多々あり、大きな無駄となっているとされている。







【シンガポール駐在員  斎藤 孝宏 平成19年2月8日発】



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