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欧州委、2013年までの農産物の需給に関する中期見通しを公表


 欧州委員会は先ごろ、2006〜13年のEUにおける主要農産物の需給に関する中期見通しを公表した。今回の見
通しは、本年1月1日にEUに加盟したブルガリアおよびルーマニアを含めたEU27カ国(以下「EU27」とい
う。)としては初めてのものとなる。


ルーマニアおよびブルガリアの農業収入は2倍となる見通し

 欧州委員会は、2013年のEU27の農業者1人当たりの農業収入(実質)について、2005年と比べ23.2%増加す
ると見込んでいる。これを加盟時期別に見ると、2004年4月30日までの加盟15カ国(以下「EU15」という。)
は、同9.3%増、2004年5月1日に加盟した10カ国(以下「EU10」という。)は、同37.1%増、2007年1月1
日に加盟した2カ国(ルーマニアおよびブルガリア、以下「EU2」という。)は、同105.1%増と見込まれて
いる。EU10およびEU2での増加率の大きな要因としては、規模拡大の進展に伴う労働時間の減少に加え、E
Uという単一市場への加入による販売機会の増大などの恩恵や、EU15より低い水準で支払われている現在の共
通農業政策(CAP)による直接支払いが年々増加することによる収入の増加が大きいとしている。また、有機
や地理的表示(GI)など付加価値の高い穀物や畜産物などを生産する地域では、かなり収入が増えるものと見
込んでいる。


牛肉生産は減少傾向、豚肉生産は引き続き上昇

 今回の見通しによると畜産物の生産については、EU27で見ると、牛肉生産は引き続き減少傾向ではあるが、
そのほかの畜産物では総じて増加傾向にあるとしている。

 このうち食肉分野について見ると、EU27の牛肉生産は、イギリスにおける30カ月齢超(OTM)牛の市場流
通が昨年再開したことにより、一時的に増加している。しかし、生乳生産割当枠(クオータ)制度の下での1頭
当たり泌乳量の増加による経産牛飼養頭数の減少や、2003年のCAP改革による生産とは切り離された生産者を
単位とした直接支払いの制度(デカップリング)の導入により、中期的には再び減少傾向に転じ、2013年には、
2005年と比べ4.2%減少するとしている。牛肉消費については、堅調に推移し、生産減少による域内での供給不
足は、域外からの輸入の増加により埋め合わせされるものと見込まれている。

 EU27の豚肉生産および消費については、中期的に増加傾向で推移するが、家きん肉との競合や飼料価格の高
騰により、以前と比べその傾向は緩やかになるとしている。域外への豚肉輸出は、ユーロ高やEU域外の国々と
の競合により、中期的には減少傾向に推移するとしている。


2013年には家きん肉の純輸入地域に

 EU27の家きん肉市場に関しては、今後の鳥インフルエンザの発生状況にも影響されるが、今回の見通しでは
2006年末にウイルスが撲滅され、今後同疾病が発生しないものと仮定した見通しとなっている(注:本年1月の
ハンガリー、同2月のイギリスでの高病原性鳥インフルエンザの発生は考慮されていない)。

  EU27の家きん肉生産および消費については、ほかの食肉との価格面での優位性、また、消費者のし好が強ま
っていることなどから、ともに中期的に増加すると見込まれている。家きん肉の輸入については、世界貿易機関
(WTO)のパネルでの敗訴を受けたブラジルおよびタイに対する新たな輸入枠設定により増加、域外への輸出
については、ユーロ高および中東やアフリカでのブラジル産、米国産との競合により、減少すると見込まれてい
る。この結果、EU27は、2013年には消費量が生産量を上回り、家きん肉の純輸入地域になると見込まれている。





【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成19年2月14日発】

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