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AI損失額を1兆1千億ルピアと試算 インドネシア国家鳥インフルエンザ管理委員会は12月1日、同国の養鶏業界が鳥インフルエンザ(AI) の発生により受けた損失額が、2005年9月から1年間の合計で約1兆1千億ルピア(約143億円:100ルピ ア=1.3円)に上る見通しであることを発表した。同委員会は、養鶏農家の収入減少や鶏肉消費量の減少な どの影響が表れたとし、さらに同国において比較的安価な動物性たんぱく質の摂取源である鶏肉の消費量 が減少することにより、国民の栄養バランスの悪化も懸念している。 また、同委員会は同時期に全世界の養鶏産業が受けた損失額が約20億ドル(約2,400億円:1ドル=120 円)、さらに間接的な影響額を含めると損失額は約34億ドル(約4,080億円)に上るとの見通しも併せて発 表するとともに、AI発生によるイメージの低下や誤解などにより同国の観光産業も大きな影響を受けた としている。なお、同国のホテルレストラン協会も、ホテルの稼働率の悪化により収益が40%程度低下し たことを明らかにしている。 養鶏産業へのダメージは政府の責任 また、同国養鶏農家協会(PPUI)は、2003年にAIが発生した時のインドネシア政府の対応につい て、抜本的措置が全く取られなかった上に対応も遅かったことを指摘し、同国の養鶏産業が大きな影響を 受けた責任は政府にあると主張している。同協会によれば、政府の対応が遅れた結果、2003年以降に養鶏 農家の廃業が相次いだ結果、多数の失業者が生じたとしている。 さらに同協会は、1980年以降に外資インテグレーターの進出が本格化したことについても、政府が進出 規制などの対応を打ち出さなかったため、現在では養鶏業界の川上から川下まで外資インテグレーターの 影響が大きくなっているとともに、補助金の支給対象となる大手養鶏業者のほとんどが外資インテグレー ターであるとしている。 2007年の養鶏産業は最大7%程度の成長を予測 一方、インドネシア養鶏業者協議会(FMPI)は、2007年の同国養鶏産業の成長率について、政府に よるAIの抑制を前提とした上で、最大で7%程度の増加が見込めるとしている。同協議会によれば、同 国ではAIが未だに抑制されていないものの、消費者はAIについて良く理解しているため、鶏肉消費に 大きな影響は及ぼさないとの見解を示している。また、動物性たんぱく質を摂取する上で、鶏肉と競合し ている魚介類が比較的高価であることから、鶏肉にも競争力はあるとしている。また、FMPIは、鶏肉 の消費拡大には政府によるAI抑制が不可欠であり、政府による防疫体制の強化を期待するとしている。 家きん類の放し飼い禁止を検討 同国におけるAIのまん延を助長した原因に対しては、AI関連予算の制約、AI専門家の不足、防疫 関連施設の不備などさまざまな問題が指摘されている。この様な状況下で、同国農業省はAIの感染拡大 を防止するため、都市部において家きん類を飼養する場合に鳥かごの使用を義務付ける方針を検討してい る。既存の農業規則の強化や大統領令の発布などにより、家きん類の飼養に関する規制を強化し、放し飼 いされている家きん類などは政府関係部局に捕獲する権利を与えるとしている。 同国保健省も、AIのまん延と人への感染を防ぐためにも本規制の早期実施を求めているが、農業省は、 関係省庁、地方政府および軍などとの調整が必要であるとして、実施時期については明らかにしていない。 【シンガポール駐在員 林 義隆 平成19年1月18日発】
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