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USDA、2007年度の燃料用トウモロコシ需要は5割程度増加の見込み コリンズ米国農務省(USDA)首席エコノミストは1月10日、米上院農業委員会の国家エネルギー防 衛の強化における農業および地方の役割に関する公聴会において、「2007穀物年度(2007年9月〜2008年 8月)の燃料用エタノール向けトウモロコシ需要は、現在のエタノール工場の建設状況から、2006年度見 込みの5,461万トンからさらに2,540万トン(10億ブッシェル)増の8,001万トンとなる見込みである」と 述べた。 同首席エコノミストは、現在のエタノール産業は多くの予想を上回る速度で成長を遂げており、家畜生 産者は、スイッチグラスなどのセルロース作物がエタノールの供給原料としてトウモロコシ需要に対抗す ることが可能となる3〜4年の間、飼料用トウモロコシは高値で推移することが見込まれるため、この状 況に対応する必要があることを強調した。 燃料用エタノール需要の拡大により、トウモロコシの生産者受取価格は2006年初頭以降、ほぼ毎月前年 同月を上回るなど高値で推移しており、2006年12月には、前年同月を57%上回る1ブッシェル当たり3.01 ドル(トン当たり14,457円:1ドル=122円)となっている。 米シンクタンクはUSDAを上回る需要を予測 一方、米国の環境シンクタンク、アースポリシー研究所は1月4日、「自動車燃料向けの穀物需要の拡 大により世界的な穀物価格の高騰に直面する可能性」と題する報告書を公表した。 この報告書によると、米国における燃料用エタノール工場は2006年末時点で、稼働中の116工場に加え79 工場が建設中、既存の11工場が拡張中であり、さらに約200工場の建設が計画段階にあるとしている。仮に 2007年6月までに、2006年の下半期と同等のペースでこれら計画段階にある工場の建設が開始されると想 定した場合、2008年度の燃料用エタノール向けトウモロコシ消費量は、2006年度見込みの約2.5倍、さらに、 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)による2008年度トウモロコシ生産見込みの48%に相当する1 億3,900万トンに達するものと見込んでいる。 同研究所の見込みは、2006年2月のUSDAの予測を2倍以上上回るものであるが、同研究所では今回 の差異について、USDAによる予測は、2005年後半以降の石油価格の高騰による燃料用エタノール工場 への急速な投資が顕著となる以前に公表されたため、新たに建設中の工場数の情報が不十分であることな どが要因であるとしている。 トウモロコシ生産者はすべてのトウモロコシ需要への対応を強調 また、同報告書では、米国は、世界のトウモロコシ総生産量の約4割、総輸出量の7割を占めているこ とからも、トウモロコシ供給の急激なひっ迫はトウモロコシ価格のみならず、畜産物などの世界的な食品 価格にも大きな影響を及ぼす可能性があることを示唆している。 同研究所は、「現在、われわれは、食品価格に影響を及ぼすことなく、いかに多くのトウモロコシをエ タノール生産に利用出来るかを考える時である。エネルギー政策の目的は、トウモロコシ価格および農家 収入を支持することであり、世界の食料経済を混乱させるものであってはならず、スイッチグラスなどの 食料に供することのないセルロース作物からエタノールを生産する取り組みが必要である」と結論付けて いる。 なお、同報告書を受けたトールマン全米トウモロコシ生産者協会(NCGA)会長は同日、食料、飼料、 燃料、輸出と米国のトウモロコシに対するすべての需要は、トウモロコシの生産性の増加および他作物か らの転作により、今後も満たされることを強調する声明を公表し、「堅調に推移する市場のシグナルは、 トウモロコシの生産拡大を示している」と述べた。 【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成19年1月17日発】
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