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米国農務省全国調査統計局(USDA/NASS)は6月29日、2006年におけるエタノール副産物の家 畜飼料利用の状況をまとめた報告書を公表した。今回の調査は、中西部のエタノール主要生産地域(12州) の9,400戸の畜産農家を対象に、本年2月から3月にかけて、ネブラスカ州トウモロコシ生産利用販売ボー ド(州政府機関)の協力を得て実施された。 酪農経営や肉用牛肥育経営ではすでに副産物を積極的に利用 この報告によると、酪農経営の38%、肉用牛肥育経営の36%が何らかのエタノール副産物を家畜飼料と して利用している一方、その割合は肉用牛繁殖経営で13%、養豚経営で12%と比較的低い水準にとどまっ ていることが明らかになった。副産物利用の開始時期についても、酪農経営が9.2年前、肉用牛肥育経営が 5.1年前と早い時期から給与を始めているのに比べ、肉用牛繁殖経営では4.6年前、養豚経営では2.7年前と まだ副産物の利用の歴史は浅くなっている。 また、将来的に副産物の利用を検討している畜産農家の割合は、養豚経営が35%と最も高く、次いで肉 用牛肥育経営が34%、肉用牛繁殖経営が30%、酪農経営が22%となっている。この結果から、伝統的な穀 物生産地域である中西部においても、将来的には半数以上の畜産農家がエタノール副産物を利用する方向 にあることが示唆されている。 養豚経営を中心に、大規模経営で副産物の利用割合が高い 今回の報告では、総じて規模の大きい経営ほど積極的に副産物を利用していることも明らかになってい る。この傾向が最も顕著なのは養豚経営であり、副産物利用経営の飼養頭数(年間最大時)は非利用経営 の5倍以上となっている(10,957頭/2,168頭)。また、両者の差が比較的小さい酪農経営でも、副産物 利用経営における飼養頭数は非利用経営の1.6倍(223頭/142頭)に上っている。このことから、規模拡 大に伴って自給飼料の調達が困難になるほど、副産物の利用を積極的に進める必要が高まっていることが うかがえる。 また、副産物の購入先を見ると、酪農経営、肉用牛繁殖経営、養豚経営の7割前後は穀物会社や農協を 経由する形態をとっており、エタノール工場からの購入割合が5割を超えている肉用牛繁殖経営を除き、 直接購入の割合は高くない。さらに、購入時の契約はスポット契約が主流(最大が肉用牛繁殖経営の69%、 最低が肉用牛肥育経営と養豚経営の55%)となっており、年間契約(長期契約)の割合は低水準にとどま っている(全体の1〜2割程度)。 酪農経営はDDGSを積極的に利用 エタノールの製造方法には、副産物としてコーングルテンなどを生産するウェットミル方式と、副産物 としてDDGS(Distillers Dried Grains with Solubles)などを生産するドライミル方式があるが、近 年、新設されているエタノール工場の多くがドライミル方式を採用していることから、DDGSの生産量 は増加傾向にある。 今回の報告では、肉用牛肥育経営と肉用牛繁殖経営ではコーングルテンフィードの利用割合が比較的高 く、酪農経営ではDDGSなどドライミル方式由来の副産物の利用割合が高いという結果が示されている。 また、ドライミル方式由来の副産物の中でも近年生産が拡大しているDDGSは、飼養規模の大きい経営 での利用割合が高い反面、1頭当たりの給与量はコーングルテンフィードやDDG(Distillers Dried Grains。ドライミルの副産物のうち穀粒部分のみを乾燥させたもの)に比べて少ないという特徴も明らか になっている。 なお、飼料として副産物を利用する畜産農家の多くは、価格や品質には満足している一方で、アミノ酸 の一種であるリジンの含量、脂肪や繊維の含有比率の安定性、形状(粒状やペレット状の希望が多い)な どに改善の余地があるとの回答を寄せている。 ◎ 米国の2007年トウモロコシ作付面積(推計値)は3月予測を大きく上回る USDA/NASSは6月29日、2007年の主要農作物の作付面積(推計値)を公表した。このうち、ト ウモロコシ作付面積は1944年以来の高水準になるとした3月の予測値(9,046万エーカー)をさらに3% 上回る9,289万エーカーに達したものと推計している。(詳細は7月2日付け海外駐在員トピックス参照) 【ワシントン駐在員 郷 達也 平成19年6月29日発】
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