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畜産物の小売価格、干ばつで相次ぐ値上げ(豪州)


乳製品などの小売価格引き上げを予定

 2006年の大規模な干ばつの影響がいまだ残る中で、7月に入り豪州の乳業メーカー数社は、牛乳など乳製品
卸売価格を引き上げる動きを見せている。大手乳業の一つであるナショナル・フーズ社は先週、向こう6カ月
以内に牛乳をはじめとする乳製品の卸売価格を、最大で25%引き上げる計画であることを表明した。同社では、
卸売価格引き上げの理由として、乳製品の国際価格が高水準にあるなど依然として乳製品への需要が高い中で、
干ばつにより国内の生乳生産量は10億リットルも減少し、輸出需要を満たすための製品供給に支障が出ている
ためとしている。また、生乳生産を担う酪農家では、粗飼料価格などの値上がりで生産コストの上昇が続き、
必要な生乳生産量を確保するためには、乳価の引き上げを行う必要があるとしている。

  一方、豪州国内では、畜産物の小売価格はすでに上昇傾向にある。大手流通業者の調べでは、今年4月から
6月の間で、食料品の小売価格は平均2.2%上昇しており、中でも、今後、鶏肉、牛肉・羊肉、牛乳などの乳
製品の小売価格の引き上げが予想されている。鶏肉については、小売価格はすでに上昇基調にあるが、干ばつ
で例年に比べて飼料価格が高水準にあることから、数カ間以内に小売価格はさらに上昇すると見ている。また、
牛肉・羊肉、乳製品についても、干ばつにより生産者の飼養頭数が大きく減少し、その回復にはしばらく時間
を要するとしており、これらに対する需要が高い中で小売価格の引き上げはやむを得ないとしている。



小売価格の上昇は選挙戦の争点の一つに

 これら畜産物などの相次ぐ小売価格上昇の動きに対し、引き上げが正当なものであるのか疑問の声が出始め
ている。連邦政府は2006年末、干ばつを要因とした牛肉価格上昇について豪州自由競争消費者委員会(ACC
C:日本の公正取引委員会に相当)に調査を指示し、ACCCは、小規模で細分化された国内市場において、
一部の業者が不当に高い小売価格を形成するのは困難であるとの結論をすでに出している。しかし、連邦選挙
の実施を間近に控える中で、最大野党である労働党は先週、干ばつを口実に小売価格の引き上げが相次いで行
われていることは疑念を生じさせるとして、これが適切かどうか検証を求めるため、選挙で勝利した場合、A
CCCに対して調査実施を改めて指示すると表明するなど、小売価格の上昇が選挙戦の争点の一つとなってい
る。

 これに対し、国内の生産者からは、農家の販売価格と小売価格との上げ幅の差に大きな開きがあるとして、
労働党による再調査実施の案を支持する声が強い。国内最大の肉牛生産地域を抱えるクイーンズランド州農民
連盟(QFF)では、過去4年間の食品小売価格が平均17.8%も上昇しているのに対し、農家の販売価格は2.3
%の上昇にすぎないとして、適切な調査の実施を求めている。



◎ 豪州の干ばつ、一部地域では沈静化の兆し

 2006年の大規模な干ばつは、畜産、酪農など豪州各地の農業生産に大きな被害をもたらしたが、今年5月以
降、一定の降雨量が記録されたことで、その影響は徐々に沈静化してきている。一時期、州面積の実に9割以
上が干ばつ地域として認定されたニューサウスウェールズ(NSW)州では7月、干ばつ地域が州全体の69.6
%まで改善したとの発表を行った。しかし、NSW州の西部地域や、干ばつの被害が大きかったビクトリア
(VIC)州北部地域では、引き続き降雨量不足が懸念されており、干ばつからの完全回復には、相当の時間
を要するとみられている。





【シドニー駐在員 横田 徹 平成19年7月19日】



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