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10年ぶりに乳価を改定(タイ)


当面の値上げ幅は10%

  タイ政府は4月中旬、政府、民間乳業会社、酪農協同組合連合会などから構成される「牛乳乳製品委員
会」の合意に基づき、1リットル当たり1.25バーツ(4.6円:1バーツ=3.7円)の生産者販売価格の値上
げを認め、4月1日からさかのぼって適用することを決定した。生乳生産者販売価格は、97年に農業協同
組合省(MOAC)農業経済事務所により、基準価格が同12.5バーツ(46円)に決定されて以来、これま
で変更されなかった。近年、飼料原料価格の上昇や原油高などの生産コストの上昇は、生産者の経営を圧
迫しており、生産者側は同2バーツの引き上げを要求してきたが、当面の対応として10%の引き上げが認
められた。


過去10年間に生乳生産は倍増

  今回引き上げられる前の乳価は97年に決定されたが、当時の生乳生産量は41万トンしかなく、それが2005
年には89万トンと倍増している(図1)。学乳への100%生乳使用義務付けや、経済活性化の下での乳製品
消費の増加の一方で、生産者にとっては一定価格で販売できるため経営の安定化が図られることなどが、
順調な生産増加の背景となったものとして挙げられる。




生産コストを膨張させる原料・原油高
  
  このように、おおむね安定的に生乳需給が推移する一方で、トウモロコシを中心とする飼料原料価格の
上昇や、原油価格の高騰が進展した。飼料用トウモロコシは2005年代には100キログラム当たり500バーツ
(1,850円)台だったものが、2007年直近では800バーツ(2,960円)台と約6割も上昇している(図2)。
また、原油高により2004年代には1リットル当たり10バーツ(37円)台だった石油燃料小売価格が2006年
以降は同16〜18バーツ(59〜67円)と、これも約6〜8割上昇している(図3)。

  MOACによれば、これらのコスト上昇を理由として約15%の酪農家が経営を中止したとしている。
(海外駐在員情報738号参照)




再値上げの可能性も

  今回の乳価引き上げに際して、「牛乳乳製品委員会」は2007年1月から討議を開始し、3月末に行われ
た2回目の会合で合意したとされているが、これらのほかに非公式の会合が何度か行われたとされている。
今回の決定と生産者側の要求の差額については、畜産局(DLD)、農協振興局(DCP)と生産者が
「生乳生産コスト研究チーム」を既に立ち上げており、検証結果によっては、再値上げもあるとされてい
る。

      
                                           

【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏  平成19年6月7日発】


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