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今後の農産物価格は上昇局面と予測 欧州委員会は5月下旬、2007年版の今後の世界の農産物市場の見通しを公表した。同委員会は四半期に1 度、農業貿易政策に関し、さまざまなテーマについて分析結果を公表しており、今回は、今後10年間の農産 物市場の動向について分析を行った。2005年12月にも同様のテーマの分析結果を公表しており、この時点で 農産物価格は「比較的安定的に推移する」と見通していたが、今回は「上昇局面に入った」と分析している。 農産物価格上昇見通しへとつながった変化要因 約1年半の間に農産物価格の見通しが大きく変化することとなった要因として、まず、供給面では世界的 にいろいろな地域で発生する干ばつの影響を挙げている。特に、最近の豪州の干ばつは穀物生産および輸出 量の減少を引き起こすとともに、乳製品の価格高騰を招く要因となっているとしている。 しかしながら、前回の時点では予想できなかった大きな要因として、空前のバイオ燃料利用の拡大による 農産物の需要増を挙げている。前回の見通しの時点では、まだ、米国におけるバイオエタノール生産のブー ムをはじめとするバイオ燃料生産の拡大ペースやその影響度合いが予想されなかったとしている。その影響 は穀物や油糧作物のみならず、それを利用する畜産物生産のコスト上昇要因となるなど潜在的に大きなもの となっているともしている。 品目別の今後の見通し 今回の見通しは、経済協力開発機構(OECD)、国連食糧農業機関(FAO)、食料・農業政策研究所 (FAPRI)などによる見通しを参考に分析を行っている。品目ごとの見通しのポイントは次のとおり。 ・穀物 生産については、飼料利用や工業利用の増大を背景に年1.2〜1.4%の割合で拡大すると見込んでいる。 一方、在庫水準については、トウモロコシの場合、現在の消費量の12%の低い水準が続くと見ている。価 格については、過去10年に比べ、今後の10年はおおむね上昇すると見込んでいる。 なお、トウモロコシを中心とした穀物の高水準の価格が続く場合の問題点として、バイオ燃料利用の拡 大が高価格の要因の1つとした上で、いずれ作付拡大や新技術の開発により「エタノールバブル」がはじ け、トウモロコシ生産者の経営などに影響が出てくる危険性があるとしている。 ・乳製品 今後10年間の市場は、緩やかな拡大を続ける。これは、世界の消費の半分を占めるアジアにおける消費 が拡大を続けるとの見通しに基づいている。価格についても今後10年間は、最近の乳製品価格の高騰を考 慮しない場合でも上昇すると見込まれ、FAPRIの分析では約40%上昇するとしている。なお、EUの 輸出量については、生乳クオータによる生産量の抑制や域内消費の拡大を背景に減少していくと見込んで いる。 ・食肉 牛肉については、アジアでの需要の拡大を背景に、生産・消費ともに年1.4〜1.9%の割合で安定的に拡 大すると見込んでいる。輸出量についても、今後10年間に15〜30%増加すると見込んでいる。 一方、豚肉市場については、世界の豚肉生産・消費の半分以上を占める中国で、一人当たりの消費量が すでに頭打ちの状況にあるなど、開発途上国での需要が伸び悩むなどの予測から、年1.5%ほどの割合で 縮小すると見込んでいる。 家きん肉については、今後も拡大を続けるが、これまでの拡大のペースよりは鈍化すると見込んでいる。 OECDおよびFAOの見通しでは、生産・消費は過去20年間の拡大割合の半分以下の年2.3%としてい る。
【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成19年5月23日発】
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