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家畜疾病清浄化への取り組み(フィリピン)


高病原性鳥インフルエンザ(AI)への警戒

  AIの感染源の一つである渡り鳥の季節を前に、フィリピン農務省(DA)は10月29日付けで、AIに対
する注意と渡り鳥に対する警戒を促した。フィリピンは、東南アジアで3カ国のみとなっているAI清浄国
のうちの1カ国である(他の2カ国はシンガポールとブルネイ)。農務長官は、この清浄性を維持し、国内
の1,500億ペソ(約3,900億円:1ペソ=2.6円)の市場規模と15万人の雇用があるとされる養鶏産業を守るた
めに全国民が協力すべきであり、畜産局(BAI)と地方自治体に対して、12月までの間、渡り鳥の監視を
強化するよう指示したと語った。また、DAが国境や海岸線、アヒルの飼育密度が高い地域といったAIの
発生の危険がある25地域において情報提供などのキャンペーンを強化するとともに、渡り鳥の集まる要警戒
地域を20カ所指定し、アヒル農家に対してこの地域の周囲でアヒルを放し飼いにしないよう要請しているこ
とを明らかにした。さらに、病気の鳥を発見したら、すぐに最寄りのBAI事務所に連絡するよう要請した。

  こうした対策に加え、AIの発生に備え、すでに地方レベルで特別対策本部や緊急対策チームが組織され
ている。また、迅速な診断と適切な対策を行うためのAI診断所を全国に設置するとともに、BAIが中心
となって、地方自治体を対象に机上訓練や対策計画についての研修会を開催することとしている。

  BAIは現在、獣医から成るチームを結成し、畜産農家に対する全国的なAIウイルスの危険性について
の啓もうを行っている。また、AIの発生が疑われた場合には、AI対策本部は24時間以内に適切な対策を
実施するための緊急対策チームを動員、派遣するとしている。



口蹄疫清浄国宣言に向けた対策の進展

  またDAは、近年成長を続けている養豚産業のさらなる拡大を図るため、2008年1月に国際獣疫事務局
(OIE)に対して、口蹄疫清浄国宣言の申請をすることとしている。現在はOIEにより、ミンダナオ地
域、ビサヤ地域、パラワン島、マスバテ島がワクチン非接種口蹄疫清浄地域と認定されており、全国的な清
浄国宣言のためには、残るルソン地域の清浄化が課題となっている(海外駐在員情報通巻第760、774号参照)。
このためBAIは、ルソン地域の3地区において、養豚協会や地方自治体の協力の下にワクチンキャンペー
ンを強化している。

  フィリピンでは昨年1月から口蹄疫の発生はなく、BAIは、このまま清浄性が維持されれば、2008年1
月の申請により、5月のOIE総会においてフィリピンの口蹄疫清浄国宣言がなされると期待している。

  農務長官も、OIEの口蹄疫清浄国宣言による豚肉の輸出促進と養豚コスト削減を期待している。7月に
ルソン地域のブラカン州とパンパンガ州で豚コレラが発生した際も、口蹄疫清浄国の申請には直接影響がな
いとしながらも、迅速なワクチン対策と輸送の際の検疫対策を指示しており、豚コレラの封じ込めに成功し
ている。



水牛では出血性敗血症が発生

  一方、ビサヤ地域のサマール島北サマール州では、9月以降、水牛の出血性敗血症が発生している。フィ
リピンでは役畜として水牛が広く飼育されており、その飼養頭数は2006年7月1日現在、約339万頭と、肉
牛の約253万頭より多い。このうち北サマール州では約5万頭が飼育されているが、9月の初発以降、10月
第4週までに190頭以上の水牛が死亡し、これは約4百万ペソ(約1千万円)の被害に相当すると報道され
ている。出血性敗血症はこの地域には常在しており、最近の大雨といった天候の急激な変化が今回の発生の
一因として考えられている。現在、情報提供やワクチン接種、発生地域周辺でのと畜禁止とサマール島3州
の移動制限、死亡畜の埋却と消毒の徹底、獣医チームによる監視といった対策が実施されている。




【シンガポール駐在員 佐々木 勝憲 平成19年11月1日発】



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