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牛乳・乳製品などの小売価格上昇(豪州)


小売価格動向、牛乳・乳製品、鶏卵などは上昇、牛肉、豚肉などは安定

 豪州統計局(ABS)は10月25日、2007年9月期(四半期ごとに公表)の消費者物価指数を公表した。食品
全体では、前年同期より1.8%増(前回公表値比1.9%増)となった。豪州では、最近、食品小売価格の引上げ
が話題として取り上げられている。

 主な農畜産物についてみると、パン:同5.3%増(同1.0%増)、牛乳:同5.4%増(2.4%増)、チーズ:同
8.4%増(同2.7%増)、鶏肉:4.0%増(同1.5%増)および鶏卵:同9.9%増(同増減なし)などで、小売価格
が上昇している。これは、干ばつなどに伴う生産減やコスト高、国際需給ひっ迫に伴う市場価格の上昇などが
小売価格に反映したためと見られている。

 一方、牛肉:1.4%減(同0.4%減)、羊肉:同1.3%減(同0.1%増)および豚肉:0.2%減(同0.8%減)に
ついては、前年並みまたは前年を下回る水準となっている。牛肉や羊肉については、長引く干ばつの影響によ
り、家畜の出荷頭数が増加したこと、また、豚肉については、海外から安価な輸入豚肉が増加したことに伴う
需給緩和などが背景にあると見られている。

 なお、参考までに、ABSが10月31日に公表した2007年9月期(四半期ごとに公表)の主要8都市における
食品小売価格調査結果のうち、シドニーにおける主な畜産物小売価格は次のとおりである。








鶏肉や牛乳・乳製品小売価格は、さらに上昇の見込み

 こうした中、鶏肉や牛乳・乳製品については、今後さらに小売価格を引き上げる動きが見られる。
 
 鶏肉業界団体であるオーストラリアン・チキン・ミート・フェデレーション(ACMF)は10月24日、鶏肉
および鶏肉加工品の小売価格を11月中旬から20〜30%引き上げられる見込みであることを公表した。ACMF
では、鶏肉生産コストの6割以上を占める飼料穀物価格がこの1年間で2倍以上に上昇したことに加え、燃料
費や電気料も上昇した結果、企業努力によるコスト吸収が困難な状況となった。このため、経営を継続させる
ためには、これらのコスト増加分を小売価格に転嫁せざるを得ないとしている。

 また、豪州乳業大手のナショナル・フーズは、乳製品国際価格が予想以上に上昇したこと、干ばつの影響に
より生乳仕入コストが上昇したことなどから、来年初頭にはさらに牛乳・乳製品などの出荷価格を引き上げる
意向を示している。同社は今年7月、乳製品国際価格の上昇、干ばつによる生乳生産量の減少および飼料価格
の上昇などを理由に、半年間、製品出荷価格を20〜25%引き上げると公表していた。また、ほかの乳業会社で
も、原料となる生乳を確保するため農家への支払い乳価を再値上げする動きがあり、今後、さらに牛乳・乳製
品小売価格が上昇するものと予想される。          



肉牛取引価格は下落するものの、牛肉小売価格は安定的に推移

 一方、牛肉小売価格については、対照的な動きが見られる。豪州牛肉協会(ABA)は10月29日、豪州自由
競争・消費者委員会(ACCC)に対し、牛肉の小売価格が適正であるか調査するよう要請した。ABAでは、
豪州の肉牛取引指標価格がこの3カ月間で18%下落したにもかかわらず、スーパーマーケットの牛肉販売価格
は据え置きまたは上昇しており、適正な小売価格でないと指摘している。ACCCでは今年2月、すでに干ば
つ時における肉牛取引価格および牛肉小売価格の関連性に関する調査分析結果を公表している(「海外駐在員
情報 第757号」参照)。その中で、食肉の流通ルートが複雑であること、また、大手小売業者は直接買付契約
をしていることなどから、結果的に、食肉小売価格と肉牛取引価格の連動性が希薄になると結論付けている。


 
【シドニー駐在員 井田 俊二 平成19年11月8日発】



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