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日本・タイ経済連携協定(JTEPA)が発効(タイ)


日本・タイ経済連携協定が発効

 日本とタイの経済連携協定(JTEPA)が11月1日に発効した。日本にとっては、シンガポール、メキシコ、
マレーシア、チリに続く5番目のEPA発効となる。JTEPAは、2004年2月より交渉が開始され、鉄鋼や自動
車関連分野で調整に時間を要したものの、2005年9月には両国首脳の間で大筋合意に達していた。その後、タイに
おけるクーデターの発生による政権交代などの影響により調印が遅れていたが、今年4月3日の安倍総理大臣(当
時)とスラユット首相によるJTEPAへの署名を受け、10月2日に本協定に係る外交上の公文の交換が行われた
ため、公文交換の翌日から起算して30日目に当たる11月1日が協定発効日となった。



鶏肉調整品は関税削減、豚肉調整品は関税割当を実施

 農林水産分野においては、タイ側の主な関心品目であるエビ、エビ調製品などについて日本が関税の即時撤廃を
行うとともに、同じくバナナ(生鮮)などについては関税割当の設定が実施されるなど、タイの関心品目に対する
市場アクセスの改善を行うとともに、食品安全に関する共同研究の促進や両国農協間の連携強化などが盛り込まれ
た。

 日本への市場アクセス取り扱いのうち、畜産物に関しては鶏肉が関税削減の対象とされ、鶏肉(骨なし)の関税
が5年で11.9%から8.5%に、鶏肉調製品の関税が5年で6.0%から3.0%にそれぞれ削減されることとなった。また、
豚肉調製品の一部については、バナナ(生鮮)や糖みつ(甘しゃ)とともに関税割当の対象品目とされ、年間1,200
トンの関税割当(平成19年度は11月1日からの適用となるため500トン)と一次税率が16%に設定された(二次税
率は20%)。この他、豚肉が再協議の対象となったほか、牛肉や指定乳製品などはJTEPAから除外とされた。

 また、今回、関税割当の対象となる豚肉調製品(HSコード1602-41-090、1602-49-290)の2006年輸入数量は合
計で約8万2千トン、うちタイ産は約4,300トンでシェアは約5%となっており、2007年輸入数量については9月
までの合計で約6万6千トン、うちタイ産は同約2,600トンとなっている。



タイ政府はJTEPAに期待、業界は冷静な反応

 タイは、2005年に豪州およびニュージーランドとの間にFTAを締結しているほか、中国およびインドとは2010
年までのFTA締結で合意している。今回、タイの主要貿易国である日本とのEPA発効は、内需を中心に景気の
低迷が続いているタイにとって総じてプラス材料と受け止められているが、主要農産物に関しては砂糖が再協議、
米が除外となるなどの不満も残っている。

 今回のJTEPA発効に関し、同国農業・協同組合省(MOAC)は、エビと鶏肉調製品の対日輸出拡大に期待
を寄せている。特に、日本における中国産鶏肉調製品の輸入動向には強い関心を示しているが、JTEPAの発効
や中国産食品の安全性に係る問題などがタイ側に有利に働くものとみている。

 しかし、この様なタイ政府側の期待に対し、タイ畜産業界は、鶏肉調製品に係る関税の下げ幅が小さいことや、
豚肉調製品に対する関税割当数量が少ないことなどを理由に当面の影響は少ないとみており、総じて冷静な反応を
示している。主な畜産関係団体の反応は次のとおりとなっている。


○タイブロイラー加工輸出協会(TBPEA)
  鶏肉調製品の初年度における関税引き下げは1%未満であり、大きな効果は得られないものと思われるが、来
 年には引き下げ幅が1%に達するため輸出数量も増加するのではないか。5年後に関税が3%に引き下げられれ
 ば、中国産に対する競争力も増すものと考えている。

  最初の1〜2年において、輸出業者が得られる恩恵は小さいと思うが、JTEPAの発効によるタイ産鶏肉調
 製品への安心感など、心理的な好影響を期待している。いずれにしても、JTEPAの恩恵を生かすため、原産
 地証明などの準備を進めている。


○養豚協会(SRAT)
  豚肉調製品に対する関税割当には感謝するが、1,200トンは少な過ぎる。今後、割当数量が増加することに期待
 している。長期的には、豚肉調製品生産量の増加、日本への輸出量増加が期待できると考えているが、短期間で
 は大きな効果は得られないものと思われる。


○養豚加工輸出協会(SPPEA)
  豚肉調製品の関税割当数量が1,200トンでは少な過ぎる。農業・協同組合省畜産開発局(DLD)で、輸出業者
 各社に対する配分が実施されたが、1社当たりの配分数量はわずかなものとなっている。






【シンガポール駐在員 林 義隆 平成19年11月8日発】



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