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米国農務省、食肉の安全性確保対策を強化


カナダからの輸入食肉に対するO-157などの病原菌検査を拡充

 米国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS) は11月3日、カナダからの食肉・家きん肉輸入製品に
対する病原性大腸菌O-157など食中毒の病原菌検査を拡充する方針を公表した。
 
 これは、米国内で本年9月末以降、大規模リコールに発展したトップスミート社製牛ひき肉のO-157感染
原因が、カナダから輸入された牛肉にあった可能性が高いとされたことによるものである。FSISは10月
26日、カナダ食品検査庁(CFIA)との合同調査の結果、同社へ牛肉ひき材(beef trim)を輸出していた
カナダのランチャーズビーフ社製牛肉から、トップスミート社製牛ひき肉とPFGE型(パルスフィールド
ゲル電気泳動法)が同じO-157を確認したことを公表していた。

 FSISでは、今回の措置により、11月5日以降、カナダ産食肉製品に対するサルモネラ菌、リステリア
菌、病原性大腸菌O-157の検査を拡充するとともに、ランチャーズビーフ社に焦点を当てたカナダ食品安全
システムの査察を実施する予定であるとしている。



O-157予防措置として米国内食肉処理施設の検査プログラムを見直し

 米国では、96年以降、連邦政府が検査を行うすべての食肉処理施設に対して、危害分析重要管理点監視
(HACCP)システムの採用が義務付けられるなど、食中毒などに対する食品の安全性確保対策が図ら
れてきた。

 FSISによると、本年(11月7日現在)の病原性大腸菌O-157による牛肉製品のリコール件数は既に
20件を数え、昨年の8件を大幅に上回る水準となっている。中でも、トップスミート社(米国最大の冷凍
ハンバーガー製造業社)の牛ひき肉リコールでは、同社は9月25日当初、約33万ポンド(約150トン)の自
主回収を開始したが、同月29日には、リコール数量が約2,170万ポンド(約9,843トン)に達し、米国史上
2番目の大規模リコールに発展した経緯がある(同社は10月5日、リコールに伴う経済的影響を理由に操
業停止)。
 
 このような中、FSISは10月23日、増大する病原性大腸菌O-157のリスクから公衆衛生を保護するた
め、@牛肉ひき材の早期検査・分析の実施、A新たなチェックリストを活用したO-157の管理・確認の徹
底、B米国産および輸入牛ひき肉原料の検査拡充、Cリコールの迅速化、DFSISが行うO-157定期検
査の拡充、E輸入牛肉製品の安全性の確保―を柱とする現行の検査プログラムの拡充措置を公表した。

 FSISは、本年6月の段階で、O-157による牛肉製品のリコール数および感染者数の増加を認識して
おり、7月には、牛ひき肉検査数を従来より75%以上増加するなど、O-157が確認された連邦食肉検査法
に基づく食肉加工場を中心に、検査プログラムの徹底が図られているとしている。



カナダでも今夏牛ひき肉からO-157を確認、現在USDAとともに関連性を調査中

 一方、CFIAは10月26日、カナダ公衆衛生庁(PHAC)とともに、今夏にカナダで発生した病原性
大腸菌O-157に関する調査を継続中であることを公表した。この調査は、本年7〜9月の間に、カナダの
ニューブランズウィック、ケベック、サスカチュワン、オンタリオ、ブリティッシュ・コロンビアの5州
で確認された45の事例を対象としている。
 
 これまでの調査によると、ほとんどの事例で共通した大腸菌株が確認され、また、そのほとんどが牛ひ
き肉から発生しているとされている。さらに、この大腸菌株は、先述のランチャーズビーフ社(アルバー
タ州、同社は8月15日に操業停止)から採取された牛肉サンプルのDNA検査を通じても確認されており、
CFIAでは現在、同社とその他事例の関連性について調査中であるとしている。

 なお、米国の業界情報によると、トップスミート社の冷凍ハンバーガーで確認された大腸菌O-157株は
最低でも3種類あり、感染源はランチャーズビーフ社以外にもある可能性があるとされている。




【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成19年11月7日発】



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