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農業生産は好調を維持 フィリピン農務省農業統計局(BAS)は11月14日、2007年1〜9月までの農業生産状況を公表した。農業部 門全体における生産額(85年指標価格)は、前年同期比4.3%増の2,277億ペソ(約5,692億円:1ペソ=2.5円) となり、2007年の農業総生産は上半期に引き続き好調を維持している。 部門別の農業生産額は、家きん部門(鶏肉、アヒル肉、鶏卵、アヒル卵)は314億ペソ(約786億円)とほぼ前 年並みとなったものの、作物部門が同4.2%増の1,065億ペソ(約2,662億円)、水産部門が同7.9%増の600億ペソ (約1,500億円)、畜産関係のうち家畜部門(牛肉、水牛肉、豚肉、ヤギ肉、生乳)が同2.1%増の298億ペソ(約 744億円)となった。 家畜部門の生産量については、豚肉が同2.4%増の135万トン、水牛肉が同3.4%増の9万7千トン、生乳が同 3.3%増の1万トンと上半期に引き続き増加傾向で推移している。このほか、ヤギ肉は同1.8%増の5万9千トン、 牛肉は同0.6%減の17万1千トンとなった。今年7月に豚コレラ、9月には水牛に出血性敗血症が発生したもの の、フィリピン農務省(DA)による迅速な防疫対策などもあり、豚と水牛の生産動向に大きな影響は見られな い(海外駐在員情報通巻第790号参照)。 また、家きん部門の生産量については、鶏肉生産量が同0.6%増の82万4千トン、鶏卵が同1.2%増の24万5千 トンとなった。一方、アヒル肉とアヒル卵については、それぞれ同4.3%減の3万2千トン、同4.9%減の3万6 千トンと前年同期に引き続き減少傾向で推移している。 水牛の生産振興が課題 同国における豚の飼養頭数は、2005年に前年を下回ったもののその後は増加傾向で推移しており、2007年の豚 の推計飼養頭数は約1,346万頭となっている。近年はインテグレータの飼養頭数の増加が目立っており、2007年 のインテグレータの飼養頭数は同10.7%増の367万頭となっている。 一方、牛と水牛については、飼養頭数がほぼ前年並みで推移しており、飼養規模20頭未満の小規模経営が全体 の9割以上を占めている。同国における2006年の牛肉および水牛肉の消費量は約33万6千トンで、このうち水牛 肉の消費量が約4割を占めている。輸入数量は、牛肉が3万トン前後であるのに対し水牛肉の輸入数量は6万ト ン台で推移している。また、同年の生乳生産量は1万3千トンとなっているが、このうち乳用水牛の生産量が約 4割を占めるなど、同国の畜産物需給に占める水牛の役割は大きい。このため、DAは水牛肉と水牛乳の供給増 加を図るため水牛の品種改良を進めており、インドから優良種の導入を検討している。これに対して、国内の家 畜生産者は、インドが口蹄疫清浄国でないことから、同国からの水牛や水牛肉の輸入について反対している。 トウモロコシ生産量は昨年を大きく上回る見込み 作物部門のうち、主要作物である米(もみ米)の生産量は同3.5%増の987万5千トン、トウモロコシは同9.5 %増の529万1千トンとなった。乾期の影響が懸念されたものの、ハイブリッド品種の作付面積の増加などが寄 与したとしている。 また、DAは今年下半期のトウモロコシ生産量が、前年比15.5%増の約402万トンに達する見通しである旨公 表した。品種別では、主に飼料用に供される黄色トウモロコシが同25.6%増の約249万トン、食用に供される白 色トウモロコシが同2.2%増の約153万トンと予想している。これは、ハイブリッド種の利用増加や同国中部の ヴィサヤ地域や南部のミンダナオ地域における作付面積の増加によるものとしている。【シンガポール駐在員 林 義隆 平成19年11月22日発】
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