ALIC/WEEKLY
三度目のAI清浄化宣言 マレーシア農業・農業関連産業省は9月10日、今年6月に首都近郊のスランゴール州で発生した高病原性鳥イン フルエンザ(AI)について清浄化が確認されたと発表した。同国におけるAIの発生は、2004年8月にマレー半 島北部のペラ州とケランタン州で確認されたのが最初で、続いて2006年2月にはスランゴール州などでAIウィル スが検出されており、今回の発生が3回目となる(「海外駐在員情報」771号参照)。 同国獣医局(DVS)は、6月5日に検体のAIウィルスが陽性と確定した後、発生場所から1キロメートル以 内の家きんの殺処分を実施しており、その後3カ月間の監視期間に新たな発生は確認されていなかった。また、同 省は今回殺処分された家きんは約4千2百羽で、殺処分に係る補償金が総額約4万リンギ(約138万円:1リンギ= 34.6円)と発表した。さらに、2004年以降、同国でAI防疫対策のために殺処分された家きんは合計で約8万羽、 農家に対する補償金総額は約1千万リンギ(約3億5千万円)としている。また、長期的な感染予防対策として、 家きんなどの放し飼いに対する規制の強化が必要であり、州政府による現行の規制の強化もしくは新たな規制の制 定を提唱している。 生体鶏輸出数量は増加傾向で推移 マレーシア畜産農家協会連合(FLFAM)は、8月分の生体鶏輸出数量を公表した。これによると、8月の輸 出数量は前年同月比4%増の約330万羽、1月から8月までの累計では前年同期比8.8%増の2千7百万羽となって おり、AI発生に伴う影響はほとんどないものと思われる。なお、マレーシアにおける2004年の家きん飼養羽数は 約1億9千万羽で、今回AIが発生したスランゴール州では全体の約5%に当たる1千万羽が飼養されている。 同国の生体鶏輸出数量は、2004年8月に同国で最初のAI発生が確認される以前は約5千万羽前後であったが、 同年以降は3千5百万〜3千7百万羽台で推移している。同国の生体鶏輸出は主にシンガポール向けとなっており、 2004年以前はシンガポールの仕向け割合が全体の約9割となっていたが、それ以降はほぼ全量がシンガポール向け となっている。また、2004年以降もマレーシアでは2回にわたりAIの発生が確認されているが、同国からの生体 鶏輸出数量は増加傾向で推移している。 さらに、FLFAMはブロイラーの農家販売価格も併せて公表しているが、9月14日現在では前年比57%高の1 キログラム当たり4リンギ(約138円)となっている。昨年は、AIの発生が確認された後、前年同期を下回る水準 で推移していたが、今回はほぼ2005年並みの価格水準で推移している。 シンガポールも家きんの輸入停止解除 一方、シンガポールは育成用と食用に供する家きんを生体輸入しているが、うち食用に供する家きんについては 全量をマレーシアに依存しており、その割合は生体輸入数量の99%以上を占めている。シンガポール政府は、2004 年にマレーシアでAIの発生が確認された際は、同国産の家きんおよび家きん製品の輸入停止措置を実施したが、 代替輸入品の手配が進んでいることを公表するなどして事態の沈静化に努めた(「海外駐在員情報」639号参照)。 マレーシア産生体家きんの輸入停止措置は、シンガポールの鶏肉需要に大きな影響を与えることから、その後はA I発生が確認された州の家きんおよび家きん製品のみを輸入禁止としており、今回も輸入禁止措置が採られたのは スランゴール州産の家きんと家きん製品のみであった。シンガポール食品獣医庁(AVA)は、マレーシア政府の AI清浄化宣言を受け、9月17日に同州からの輸入停止措置を解除している。 【シンガポール駐在員 林 義隆 平成19年10月11日発】
元のページに戻る