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生産過剰により米国養豚経営の収益性は低下


豚総飼養頭数は80年以降最高水準

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が9月29日に公表した豚飼養動向調査結果によると、
2007年9月1日現在の豚総飼養頭数は、前年同期比173万頭(2.8%)増の6,465万頭と、1980年以降最大の
結果となった。
 
 近年、米国内の肉豚生産は増加傾向で推移しており、また、同国内の出荷頭数の約1割を占めるカナダ
からの生体豚輸入が増加(本年1〜7月には前年同期比11.1%増の546万頭)していることから、本年8月
までのと畜頭数は、同2.8%増(6,994万頭)と、過去最高を記録した2006年を上回る水準となっている。

 また、現在、カナダでは、カナダドル高による価格競争力の低下などにより、大手豚肉パッカーによる
生産規模の縮小が進展している。USDAでは、これを受け、2008年上半期まではカナダ産生体豚輸入は
増加するとみて、同年の豚肉生産量は、前年をさらに2%程度上回るものと見込んでいる。

 
2007年第4四半期以降、肥育豚価格は軟調に推移

 米国の豚肉需要を見ると、現在、堅調に推移している国内需要に対し、これまで豚肉生産の増大をけん引
してきた輸出需要は、2007年1〜8月では、主要輸出国であるメキシコ向け(前年同期比30.5%減)やロシ
ア向け(同17.8%減)が大幅に減少したことにより、前年同期を3%程度下回る水準となっている。

 このような中、米国最大の豚肉パッカーであるスミスフィールド社は8月24日、中国と年内に6,000万ポ
ンド(2.7万トン、2006年中国向け輸出量の約5割相当)の販売契約を締結したことを公表した。これによ
り、USDAも、本年第4四半期の豚肉輸出量を上方修正し、2007年全体では、前年を1%程度下回る水
準になるものと見込んでいる。

 一方、米国内の肥育豚価格は、近年、肉豚生産が増加傾向で推移してきたにもかかわらず、海外からの
米国産豚肉製品に対する需要増などにより、比較的堅調に推移してきた。しかし、本年8月には、前年同
月比2.3%安の100ポンド当たり52.1ドル(1キログラム当たり136円:1ドル=118円)と下落基調に転じ
ており、USDAでは、同第4四半期には、同45〜47ドル(同117〜122円)と軟調に推移するものと見込
んでいる。


養豚経営者の収益性の低下は当面避けられない状況

 同省経済調査局(USDA/ERS)によると、アイオワ州など米北部中央地域における養豚一貫経営生
産者は、2004年初頭以降、長期にわたり収益を確保してきたとされている。

 また、USDAが9月12日に公表した2007年の主要作物生産予測の中で、トウモロコシについては、133
億ブッシェル(前年比26%増)と記録的な生産量が見込まれていることから、今後、大幅にトウモロコシ
価格が高騰する可能性は少ないものと見込まれる。

 しかし、今回の豚飼養動向調査結果を受け、業界内では、肉豚供給の増大は、肥育豚価格の低迷を招き、
また、養豚コストは大幅に縮小出来ないとされていることからも、本年第4四半期以降は、米国養豚経営
者の経営悪化は避けられないものと考えられる。

 なお、今後、カナダ産生体豚の輸入については、同国内における飼養規模が縮小していることから(2007
年7月1日現在の豚総飼養頭数は、前年同月比2.5%減の1,469万頭)、長期的な輸入増は見込み難いものの、
米国の豚肉関係者の間では、養豚経営の収益改善に向けて、輸出市場の拡大に対する期待はさらに高まるも
のと思われる。




【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成19年10月11日発】



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