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乳業メーカーによる生乳買い取り価格の値上げの動き インドネシアの生乳生産量は、2006年には年間約61万7千トンに達し、うち約95%がジャワ島で生産されてい る。インドネシアで消費される牛乳等(加工乳、乳飲料含む)の原料の自給率は約3割であり、残りの約7割 を輸入に依存している。 記録的な高値で推移する海外の粉乳価格を背景に、国内最大の生乳生産州である東ジャワ州では、乳業メーカー が生乳の買取価格を平均で1キログラム当たり約60ルピア(約0.8円:1ルピア=0.0128円)値上げし、乳質の 等級による差があるものの、1キログラム当たり2,450〜2,925ルピア(約31.4〜37.4円)から2,510〜2,985 ルピア(約32.1〜38.2円)になった(海外駐在員情報通巻第776号参照)。 一方、東ジャワ州に次ぐ生産州である西ジャワ州、中央ジャワ州においても、乳業メーカーが国産生乳の確保 を目的として、買い取り価格を値上げしている。一例として、大消費地であるジャカルタに近い西ジャワ州では、 農協の乳業メーカーへの出荷価格が、1キログラム当たり2,400〜2,900ルピア(約30.7〜37.1円)から2,750〜 3,600ルピア(約35.2〜46.1円)に上昇した。 価格上昇を受けた生乳増産への取り組み インドネシアの酪農は、1戸当たり3〜5頭の乳牛を飼養する小規模経営が主体であり、こうした酪農家が加 入する酪農協が中心となって、価格上昇を背景に生乳増産への各種の取り組みが始まっている。 これまで、インドネシアの酪農は、1日1頭当たり平均10キログラム程度という低い生乳生産性に悩んでいた。 これを解消するため、これまでも豪州やニュージーランドから高能力牛を輸入していたが、これを促進するため、 酪農家への支払い乳代から1%を積み立て、基金を造成するとしている。 また、生産コストの低減のために、育成牛用の代用乳を開発した酪農協もある。それまで使われていたオラン ダからの輸入代用乳からこの代用乳に替えることで、育成牛の飼料代が、1日1頭当たり8,000ルピア(約102.4 円)から750ルピア(約9.6円)に軽減されたという。 従来は乳価交渉の主導権は乳業メーカーにあったが、出荷先の多様性の確保による交渉における立場の強化と、 加工乳の味になれた消費者に対する牛乳の市場拡大を目的として、酪農協自らが融資を受けて、牛乳の新製品を 開発した例もある。 一方、政府も輸入原料への高い依存状態を解消すべく、家畜導入資金の借入への利子補助により、生乳の増産 を支援している。また、2007年1月から、農産物取り引きにかかる10%の付加価値税を免除しており、酪農協が 取り扱う飼料についてもコスト低減を図っている。 【シンガポール駐在員 佐々木 勝憲 平成19年10月18日発】
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