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WTO規則に基づき調査の開始を公表 豪州連邦政府の財務、貿易および農漁林業の各大臣は共同で10月17日、豪州における豚肉輸入が国内養豚 産業に及ぼす影響について調査を開始することを公表した。この調査は、世界貿易機関(WTO)の定める 規則に基づくもので、豪州における豚肉輸入のセーフガード措置発動に向けた手続きとなる。 WTOでは、セーフガードに関する協定において、加盟国が一定の条件下でセーフガード措置を発動する ことを認めている。この条件は、不測の事態により製品輸入量が増加した結果、輸入国における関連産業が 深刻な打撃を受けた場合である。ただし、輸入国における指定機関が、輸入量増加と国内産業に及ぼす影響 について調査を行い、その結果、セーフガード措置に正当性があることが立証されなければならない。生産 性委員会(PC)が、豪州政府の指定機関として、この調査を行う。豪州政府は、今回の決定について今後 数日中に、貿易関係者に知らせるとともにWTOに通告することとなる。PCでは、この調査結果について、 連邦政府に対し2007年12月14日までに中間報告を、2008年3月31日までに最終報告を提出することとしている。 豪州の養豚業界団体であるオーストラリアン・ポーク・リミテッド(APL)は、今回の連邦政府の決定 に対して歓迎する意向を表明している。APL代表は、国内養豚業界の現状を次のように指摘している。国 内養豚農家では、記録的な量の豚肉が安価で輸入された結果、肉豚販売価格が下落し、利益を圧迫。加えて、 干ばつの影響により飼料穀物価格が急上昇したため、さらに事態が悪化している。このような状況において、 誰も経営を継続できる状況にないとしている。 豚肉輸入量が急増。豚肉加工品の輸入豚肉への依存比率は67.1%と急速に拡大 豪州における2006年の豚肉輸入量は8万4,193トン(船積重量ベース)であった。2007年7月までの輸入量は、 いずれの月も前年同月実績を上回り、この間の輸入量は、6万9,862トン(前年同期比52.6%増)と前年を大 幅に上回っている。輸入相手国別では、カナダ(輸入量全体の35.7%)、デンマーク(同33.0%)および米 国(同30.6%)で全体の99%以上を占めている。この間、特にデンマークからの輸入量の増加(前年同期比 71.3%増)が大きい。 このように豚肉輸入量が急増した結果、豪州における豚肉加工品の原料として、輸入豚肉への依存度が急 速に拡大している。APLによると、2006/07年度における豚肉加工品の原料のうち、輸入豚肉の比率は67.1 %と3分の2以上に達している。2005/06年度の比率が50.4%であり、この1年間で16.7ポイント上昇したこと となる。 大手豚肉処理業者で事業の縮小を開始 こうした中、ビクトリア州およびニューサウスウェールズ州を拠点とする豪州最大手豚肉処理業者である QAFミート・インダストリーは、大幅な事業規模縮小計画を打ち出した。同社が所有する複数の養豚農場 および豚肉処理施設の一部閉鎖、養豚農家との契約の一部解除などがその内容となっている。この結果、約 800名いる同社従業員のうち、100名以上が解雇される見込みである。 同社では、現在の厳しい経営状況について、干ばつによる飼養穀物価格の急騰に加え、安価な輸入豚肉の 流入により加工豚肉市場でのシェアが奪われたなどのためと述べている。【シドニー駐在員 井田 俊二 平成19年10月25日発】
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