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国際的な乳製品需要の高まりを背景に乳製品の国際市場価格の記録的な高値が続く中で、輸出を主体とする 豪州の乳業各社は、国内での生乳集荷量を確保するため、新年度(2007/08年度)に入り相次ぎ乳価の引き上げ を表明している。一方、国内では、乳価の引き上げに伴う小売価格への波及が徐々に現れており、今後の消費 への影響も懸念されている。 2006/07年度の生乳生産量は前年度比5.1%減、輸出も後退 記録的な高値が続く乳製品の国際価格上昇の背景には、原油価格の上昇を要因としたロシア、中東などの原 油産出国や、経済成長の著しい中国、アジア諸国を中心とした乳製品に対する需要拡大が挙げられる。その一 方で、最大の乳製品供給国(地域)であるEUでは、気象要因などに伴う生乳生産量の減少、また、輸出補助 金の停止などにより乳製品の輸出量は大きく減少している。さらに、豪州での干ばつによる生乳生産量の減少 など、国際市場全体への供給量は減少していることからひっ迫傾向が強まり、価格上昇へとつながっている。 2006年の豪州は、大規模な干ばつで酪農への被害は深刻なものとなった。酪農家では、放牧地の環境悪化に 伴う乳牛一頭当たりの乳量の低下や牧草など購入飼料の増加に伴う生産コスト上昇、また、乳牛の飼養頭数削 減など、酪農生産は後退を余儀なくされた。2006/07年度の生乳生産量は、最大の生乳生産地域であるビクトリ ア(VIC)州を中心とした減産が大きく響いた結果、前年度比5.1%減の957万9千万キロリットルとなった。 また、乳製品の総輸出量も同4%減の84万6千トンと後退している。 2007/08年度の乳価、最終的にはリットル当たり42〜43豪セント台も このような状況の中、豪州国内の乳業各社は、高値での推移が続く国際市場への供給増を視野に、相次いで 乳価の引き上げを発表している。先陣を切ってVIC州を拠点とするTATURA社は6月末、前年度比30%高とな るリットル当たり40豪セント(39円:1豪ドル=98円)への引き上げを表明している。また、これに続き同じ くVIC州に拠点を置くWBCF社も同33%の引き上げを計画している。大手乳業メーカーの動向を見ると、豪州 の生乳生産量の3割強を取り扱う最大の乳業メーカーMurray Goulburn社は、今期の当初乳価について前年度 比35%高の引き上げを表明したのに続き、豪Fonterra社も、これを上回る同40%高と発表している。また、 大手乳業の一つであるDairy Farmers社も、飲用向け主体のため他社に比べて乳価水準が高いにもかかわらず、 今年9月分からクイーンズランド(QLD)州北部で同1.5豪セント(1.5円)、その他の地域で同1豪セント (1円)の引き上げを発表している。 この結果、デイリーオーストラリア(DA)の見込みでは、今期のVIC州の当初乳価水準は前期比36.5% 高としており、リットル当たり平均38豪セント(37円)に達するとしている。また、今後の乳価水準について も、例年並みの水準で乳価が加算されていった場合、最終的にはVIC州でリットル当たり42〜43豪セント (41〜42円)と非常に高い水準に到達すると予測している。 乳業各社は、相次ぐ乳価引き上げについて、干ばつにより大きな被害を受けた酪農家を支援するための措置 としているが、一方で酪農家からは、乳価の引き上げ幅が低いとしてさらなる乳価水準の引き上げを求める声 が相次いでいる。 小売価格への波及で消費への影響を懸念、輸出価格も大幅に上昇 このように乳価の引き上げが相次いで発表される中で、豪州国内では、小売価格への波及が少しずつ生じて きた。National Foods社は先日、乳製品の小売価格を最大で25%値上げすると表明するなど、乳価の引き上げ 分を小売価格に転嫁させる動きが出てきており、今後、各社もこれに続くとみられている。豪州国内では、人 口の増加などに伴い乳製品消費量が順調に増加しており、乳製品価格の引き上げは、これに悪影響を与えると の懸念も出始めている。 また、乳製品の輸出価格についても値上げが続いており、すでに2007年の下半期契約分については、上半期 に比べて2割を超える値上げが実施されている。今後、2008年分についても乳価の引き上げと国際需給のひっ 迫を要因に、さらなる値上げが予想されている。 【シドニー駐在員 横田 徹 平成19年9月6日発】
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