牛肉輸出量が4月以降急減(アルゼンチン)
政府対応の遅れが原因の模様
国家動植物衛生機構(SENASA)によると、2008年1月〜5月までのアルゼンチンの牛肉輸出量(生鮮、冷蔵および冷凍、製品重量ベ−ス)は、4月以降急激に落ち込んだことから、前年同期比8.4%減の約14万6千トンとなった。品目別では、特に加工肉が同40.8%減の約8,300トン、また、EUへの一定基準を満たす骨なし高級生鮮牛肉に関する関税割当制度(通称ヒルトン枠)に基づく輸出が、同26.1%減の約9,500トンとなった。
この原因として、業界関係者によれば、3月以降の穀物輸出税をめぐる政府と農業団体の対立があった中で、政府による4月以降の対応の遅れを挙げている。牛肉輸出の制限は、決議24/2007号により2008年1月から3カ月間延長され、1月〜3月まで認められる牛肉輸出の最低保証枠は、月間4万トンであった(ただし、ヒルトン枠は別枠)。牛肉輸出は、この決議が3月31日に失効し、4月17日に政府と業界団体の会議で最低保証枠が4万5千トンで合意されるまで停止していた。
さらに、5月6日付けで政府は規則改正により「牛肉輸出のため履行すべき条件を定めたONCCA決議42/08号」を交付し、これ以後、「ROE-ROJO(輸出業務登録証明書)」と呼ばれる申請書は牛肉製品の保管可能量を記述することなど、より詳細に記述して提出することとなった。また、食肉パッカ−の保管可能量の75%は国内向けに回すことなどとされた。
なお、今回の対立による農業団体等のストライキにより、牛のパッカ−工場までの出荷が一部滞ったことなども影響している(政府は、ストライキを原因の一つとして挙げている)。
現在の輸出状況は、一部業界関係者に確認したところ、「ROE-ROJO」をより詳細に提出することになったので手続きに時間を要し、あまり芳しくないとのことだ。
ヒルトン枠輸出は契約が一部不履行
このような中、国家農牧畜取引監督機構(ONCCA)によると、2007/08年度のヒルトン枠によるEU向け輸出は、「ROE-ROJO」の記述が詳細になったことなどから契約が一部不履行になったことが明らかになった。不履行となった数量は、契約対象数量28,000トンのうち1,834トン、その損害額は約3,700万ドル(約40億円、1ドル=107円)になるとみられている。アルゼンチンはヒルトン枠により、EUから当年7月1日から翌年6月30日までの1年間に28,000トンが割当てられ、ドイツやオランダなどに輸出している。ヒルトン枠は利幅が大きく、2007年の牛肉の全輸出量のうち、同枠が占める割合は約6%であるが、全輸出額に占める割合は約21%となっている。
この事態に対して、ONCCA総裁は、外務大臣に、EUにヒルトン枠の30日間の期間延長を求めるよう要請した。しかし、業界関係者によれば、期間延長が認められる可能性はほとんどないとのことであった。通常であれば、この時期に2008/09年度のヒルトン枠の数量配分が決定されていておかしくない。しかし、政府関係者への聞き取りによると、毎年ヒルトン枠の数量配分等には時間がかかることに加え、今回の事態があることから、あまり進展していない模様だ。
【石井 清栄 平成20年7月22日発】
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