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2008/09年度農業プランを発表(ブラジル)

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農業プランの概要

 ブラジルの農業政策は、収穫時の価格暴落リスクの低減を目的とした最低価格保証制度を基にした農業融資と取引支援が主要施策となっている。毎年、改訂される各作物の最低保証価格は、生産者の作付意欲に影響する重要な要素となるため、作付けの方向を誘導する政策手段ともなっている。2008/09年農業プランは7月に発表された。

(1)農業融資

 生産者を対象にした農業融資が行われる。この資金は、連邦政府が定める年利に調整するために充てられ、融資の元金とはならない。

 農業融資に充てられる農業融資計画額は前年を12%上回る650億レアル(4兆4,500億円:1レアル=68.4円)となっている。
(1) 営農融資とは、農畜産物の生産や加工に係る経費を対象とした融資
(2) 販売融資とは、連邦政府が定める農畜産物の最低価格を基礎として農畜産物を担保に行われる融資
(3) 投資融資は、施設機械の導入、農場整備に係る経費、協同組合の組織改革に係る経費などを対象とした融資である。
表1 表2
(参考1)
2008年7月のブラジルでの普通銀行の貸し出し金利は年利25%程度であった。

(2)営農融資

 農畜産物の生産や加工に係る経費を対象として表3に示した限度額まで融資される。年率6.75%で償還期間2年である。品目別に定められている農家当たりの融資限度額は、多くの作目において前年度から引き上げられている。
表3

(3)販売融資

(ア)連邦政府貸し付け(EGF)

 連邦政府が定める農畜産物の最低価格を基礎として農畜産物を担保に表4および表5に示した限度額まで融資される。なお連邦政府は、北部のサトウキビを対象に加えることを検討中である。
表4
表5
参考2

(イ)連邦政府買い上げ(AGF)

 特定の農産物の市場価格が、連邦政府の設定した最低価格(表5)を下回った場合、連邦政府が生産者から買い上げる仕組みである。価格が低下する収穫期に政府が収穫物を買上げて生産者価格を維持し、端境期の市場価格の高騰時に、政府在庫を放出して供給を保証することが目的である。穀物価格が上昇すると共に、肥料価格を中心に生産費も上昇していることから、今年の政府在庫の予想量は前年度に比べ大きく増加させることとしている。
表6

(4)投資融資

 2008/09年度農業プランの目玉は、劣化農地回復プログラムの新設である。同プログラムは、北部の森林を伐採して開発された農地や、南部の長期間にわたり利用された放牧地などの農地の生産能力を回復し、持続性ある生産システムを構築することが目的である。

 連邦政府は当プログラムにより、新たな農地開発を行うことなく、穀物の栽培面積を大幅に拡大できると考えている。

来年度の作付面積の大幅増は見込めず

 国家食糧供給公社(CONAB)が行った2007/08年度第10回主要穀物生産状況調査によると、今年度の作付面積は4,717.08万ヘクタールとなっているが、来年度の作付面積の増加は200万ヘクタール程度と多くの関係者は見ている。

 これは輸出価格の上昇により米ドルベースでの収入は増えているものの、レアル高と、肥料費や人件費などの生産費の上昇により、収益が余り伸びておらず、農業への投資が進んでいないためである。

 連邦政府はリンやカリウムの自給率を高めるため、これらの鉱床が確認されている土地を所有する地権者との交渉を始めている。
【松本 隆志 平成20年7月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
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