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金融危機の中でもバイオディーゼル生産への意欲は衰えず(アルゼンチン)

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アルゼンチンのバイオディーゼル産業は輸出型

 アルゼンチン再生可能燃料協会(CADER)は2008年10月、アルゼンチンバイオディーゼル産業の概観を発表し、その中で2011年の年間生産能力は400万トンに達すると報告した。
(既報:http://lin.alic.go.jp/alic/week/2008/ar/ar20081024.htm

 一方で、金融危機の影響によりアルゼンチン国内でも株安、ペソ安など情勢が大きく変化している。そこで、再生可能燃料の生産に関するコンサルタント業務を営んでいるNowa社においてバイオディーゼル産業の現状に関する聞き取り調査を行った。同社は、主にバイオディーゼル年間生産能力10万トン以上の大型工場建設の企画立案に携わっている。
(質問) 2010年からのB5(軽油への5%のバイオディーゼルの混合)の義務化により、62.5万トンのバイオディーゼル国内需要が発生するが、一方で2010年の年間生産能力は370万トンに達する見込みである。
国内需要を大幅に上回るが実現の見込みはどうか。
(回答) アルゼンチンのバイオディーゼル産業は輸出型で、ブラジルの内需型とは異なる。輸出型の場合、大豆油などの原料油価格と原油価格の関係が採算のポイントになるが、バイオディーゼル産業への投資は、今後とも原料油価格と原油価格の相関関係が現状のまま継続するという前提の下で進められている。
(質問) 農業ストや金融危機が、バイオディーゼル工場建設に向けた投資に与える影響はどうか。
(回答) 現在のところ、大型工場の建設計画には影響していない。
(質問) 米国のバイオディーゼルに対する補助金制度により、アルゼンチン産バイオディーゼルの米国から欧州への迂回輸出(splash and dash)が行われてきた。しかし、2008年10月の法改正により、外国産バイオディーゼルに補助金が支払われなくなるが、これによる影響は。
(回答) アルゼンチン産バイオディーゼルに米国産バイオディーゼルを混合することにより、1トン当たり300米ドルの補助金が支払われていたが、これは米国トレーダーの利益になるものであったため、アルゼンチンのバイオディーゼル産業の収益には影響していない。

金融危機は建設計画には影響せず

 アルゼンチンは、為替レートがペソ安(1米ドル=約3ペソ)で安定してきたこと、肥よくなパンパでは多くの肥料を必要としないことなどから、大豆生産に関しては隣国ブラジルより有利な生産状況にある。このため、金融危機の中、大豆を利用したバイオディーゼル工場建設に向けての投資意欲が衰えない理由としては、好調な穀物価格が続いたことから投資家の資金が潤沢であること、また、石油燃料の代替需要としてバイオ燃料の需要は続くと考えられていることが理由であると考えられる。

優位な大豆生産

 一方、穀物価格を見ると、2006年10月頃から上昇基調が続いたが、2008年8月頃から下落基調が続いている。
(図表1)FOB価格
 現在、アルゼンチンでは、トウモロコシは種見込みの農地340万haのうち172万haには種が行われ、大豆についても、現在は種準備が進んでいるところである。当地の農業専門誌margenes agropecarioは、10月23日現在の生産者販売価格や農業資材価格を基にしたモデル農業経営の収益シミュレーションを発表したが、これによれば、トウモロコシの収益がマイナスであるのに対し、大豆はヘクタール当たり74米ドルとなっている。

 金融危機により大きく情勢が変化する中でも、大豆生産が優位な状況が変わらないことからも、バイオディーゼル工場建設は着実に進められていくとみられる。
(図表2)農業経営の収益シュミレーション
【松本 隆志 平成20年10月26日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805