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生乳クオータ2%拡大の影響

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 欧州委員会は2007年12月12日、EU域内外における乳製品需要の増大に対応するため、2008年4月より生乳クオータを2%拡大する提案を行った。現在、設定されている27のEU加盟国別の生乳クオータがそれぞれ2%拡大され、これによりクオータ枠は284万トン増加することとなる。

生乳生産量増加により、特にチーズ生産が拡大

 欧州委員会は、本提案と併せて、酪農部門の市場動向見通しを公表しており、この中で、2008年4月以降、クオータ枠の拡大に伴い生乳生産量が「仮に2%増加」した場合の乳・乳製品需給への影響試算を行っている。

 これによれば、2007年7月に公表した「2007〜2014年におけるEUの主要農産物の需給に関する中期予測」における予測数値(ベースライン)と比べ、生乳生産量の2%増加により、2014年の生乳価格は4%低下すると見込んでいる。なお、ベースラインにおける2014年の生乳価格は、2007年の価格に比べ7%上昇すると予測している。

 また、乳製品別では、生乳生産量の増加に伴い、チーズ、バター、脱脂粉乳のいずれの生産量もベースラインに比べ増加すると見込まれるが、乳製品生産は、特に今後も需要の伸びが大きいと見込まれるチーズ生産へシフトしていくと見込んでいる。

ベースラインに比べ生乳生産量が2%増加した場合の需給見通し

 (「2007〜2014年におけるEUの主要農産物の需給に関する中期予測」における予測数値との比較)
ベースラインに比べ生乳生産量が2%増加した場合の需給見通し

生乳クオータの2%拡大は今後の酪農市場に好影響

 欧州委員会では、チーズ消費の拡大などを背景に、今後2014年までの間に800万トンの生乳生産の増加が必要と試算しており、世界的に好調な乳製品需要と併せて、2%の生乳クオータ拡大による生乳生産の増加は乳・乳製品市場に好影響を与えると見ている。ただし、2006/07生乳年度にはフランス、イギリス、ハンガリーなどを中心にクオータの未達が合計で270万トンになるなど、近年、生乳生産量がクオータを下回る加盟国が多く見られ、実際にはクオータの拡大に伴う生産量の増加は限定的と見込んでいる。
【和田 剛 平成20年1月14日発】
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