農相理事会、新たなGMO品種の承認を見送り(EU)
EUの農相理事会は2月18日、共通農業政策(CAP)の中間検証作業である「ヘルスチェック」や遺伝子組み換え体(GMO)の承認についてなど、各種農業関連施策に関する議論を行った。
遺伝子組み換えトウモロコシ4品種、承認されず
欧州委員会から、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ4品種(MON863 ×NK603、MON863×MON810、MON863×MON810×NK603、GA21)およびGMポテト1品種(EH92-527-1)の市場流通の承認について提案された。これについては、かなりの時間を費やし議論されたが、特定多数決の採択を得ることができなかった。これにより、最終判断は欧州委員会に委ねられることとなり、同委員会において承認される見込みとなった。
GMO承認については過去にも同様なケースが見られ、依然GMOに対する各加盟国の温度差が大きいことがうかがえる。
豚肉の民間在庫補助を3カ月間延長
EUでは子豚・豚肉価格の低迷が続いており、この厳しい豚肉需給に対処するため、2007年10月29日より豚肉の民間在庫補助(APS)を開始し、約10万トンを市場より隔離している。これにより価格は下げ止まったように思われたが、回復するまでには至らなかった。また、飼料価格の高騰の影響も重なり、APSだけでは豚肉需給の低迷には不十分と判断され、同年11月30日より豚肉などに対する輸出補助金を一時再開した。
しかし、依然低迷が続いており、域内最大の生産国であるドイツからは、豚肉市場の危機的状況およびこれに対応するため輸出補助金の増額やAPSの保管豚肉の市場放出による影響の緩和などの緊急的措置が必要との意見が出されていた。これは、フランスをはじめ、ベルギー、チェコ、ハンガリー、アイルランド、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキアから支持されている。
この意見に対して、フィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)は、APSによる豚肉の保管期間を3カ月間延長する提案を豚肉管理委員会に提出すると発言しており、2月21日開催予定の同委員会において議論されることとなっている。これにより、当初、本年5〜6月を中心に市場に放出される予定であった保管豚肉は、夏場以降に放出される見込みとなる。
農業団体、養豚業者の20%が廃業の懸念ありと予測
同理事会開催に当たり、欧州の農業団体である欧州農業組織委員会/欧州農業協同組合委員会(COPA/COGECA)は現在の豚肉市場について「飼料原料価格の高騰によりここ数カ月で豚肉生産費は50%も上昇、一方、豚肉価格は対前年比8%減となっており、養豚業者は1頭当たり35ユーロ(5,600円:1ユーロ=160円)の赤字と前代未聞の事態に直面している」として、現在実施されている輸出補助金やAPSについてさらに手厚く対処するとともに、飼料原料の絶対数量を増加させるため、GMOの飼料利用の承認を要求していた。
このような状態が続けば、今後6〜10カ月で養豚業者の20%が廃業に追い込まれると予測され、これにより、豚肉価格は急騰するであろうとの懸念を表明している。
今回の理事会では、新たなGMOの承認に至らず、依然その承認に時間を要するなど飼料供給の状況改善については速やかな変化が期待されないことから、今後の畜産の経営、生産動向に注視が必要となっている。
【小林 奈穂美 平成20年2月20日発】
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