干ばつ後の牛飼養頭数、早期回復を予測(豪州)
干ばつに伴う牛飼養頭数の減少は軽微。南部州を中心に牛群の再構築始まる
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は2月4日、2012年までの牛肉および羊肉の需給予測を公表した。これによると、豪州の牛肉業界にとって、2006年および2007年は広範囲にわたり干ばつの影響がみられる厳しい年となった。しかしながら、厳しい気象条件にもかかわらず、豪州全体の牛飼養頭数は、2007年の2,825万頭(前年比0.8%減)に続き2008年は2,830万頭(同0.1%増)が見込まれており大幅な落ち込みはないとみている。これは、南部州を中心に干ばつの影響により飼養頭数が減少したものの、豪州全体の牛飼養頭数の約半分を占める北部地域(クイーンズランド州や北部準州など)において気象条件に恵まれたため干ばつの影響を一部相殺したこと、このほか、農家における干ばつ対策が進んだことなどを理由として挙げている。
また、豪州東部では、昨年11月から1月にかけて広い地域でまとまった降水を記録しており、こういった地域では牧草の生育状況の回復がみられることから南部州を中心とした肉牛生産者の間では牛群再構築の動きが見られている。このため、2009年には、飼養頭数が今回の干ばつ前の2006年の水準を上回り、その後、1%程度ずつ増加し2012年には3千万頭近くに達すると予測している。
2008年の牛肉生産量は、飼料穀物高などを反映してグレインフェッド牛肉を中心に減少
2008年の牛と畜頭数は、牛群の再構築やフィードロット飼養頭数の減少などにより、前年比3.1%減の871万5千頭を見込んでいる。豪州のフィードロット飼養頭数は、飼料穀物価格が大幅に上昇したことなどから2007年後半に大きく減少した。フィードロットに仕向けられなかった牛の大部分は、グラスフェッド牛肉として輸出向けに飼育されるため、これらの牛の出荷はグレインフェッド牛肉として生産される場合より後ろにずれることとなる。このため、2008年前半にはと畜頭数が少なくなり、グレインフェッド牛肉向けのと畜頭数が15〜20%程度減少する。また、牛肉生産量は、と畜頭数の減少に加え、1頭当たりの平均枝肉重要が減少することから、同3.1%減の212万3千トン(船積重量ベース)と見込まれている。
豪州のフィードロット産業は、記録的な飼料穀物高、最大の顧客である日本からの需要減および豪ドル高といった状況を反映して、2007年12月現在の飼養頭数は前年同期比36%減の58万4千頭と大幅に減少した。こうした飼養頭数の削減は、中小規模フィードロットにとどまらず、大規模経営にも及んでいる。これらのフィードロットでは、対策として大型の肥育素牛を導入するなど平均穀物肥育日数の短縮を図っている。この結果、2008年のグレインフェッド牛肉の供給量は減少し、特に日本向け長期肥育牛肉生産量は大幅に減少するとみている。また、国内の小売や外食向け牛肉については、穀物肥育日数の短縮に伴う牛肉の品質の低下や需要の減退を招く可能性があるとみている。
今後、フィードロット産業が回復するためには、国内外市場におけるグレインフェッド牛肉価格の上昇、飼料穀物や素畜価格の大幅な下落といった状況の変化が必要であるとしている。
2008年の牛肉輸出量は日本、韓国向けを中心に減少
2008年の牛肉輸出は、前年比5.5%減の89万トン(船積重量ベース)と予測している。これは、主要輸出先である日本および韓国向け牛肉輸出において米国産牛肉との競合が一層激しくなることなどから、それぞれ同11%減、同26%減と大幅に減少するためである。しかしながら、牛群の再構築が遅れている米国や、南米産牛肉との競合が緩和された東南アジアといった市場向けの牛肉輸出は増加するとみている。
なお、中長期的にはアジアを中心に豪州の牛肉輸出量は増加し、2012年には102万トンに達すると予測している。
【井田 俊二 平成20年2月6日発】
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