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NZ最大の酪農生産地域の干ばつ宣言で今後の生産に影響も

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NZ北島では一部地域で干ばつ宣言、全体の生乳生産量に影響

 ニュージーランド(NZ)最大の生乳生産地域である北島のワイカト(Waikato)地方は2月7日、“干ばつ地帯”であることを正式に宣言した。同地方は、2006/07年度(6〜5月)のNZ生乳生産量(1,513万4千キロリットル)でみると、全体の約3割を産出(南島全体の生乳生産量にほぼ匹敵)する一大酪農生産地域である。この地域では、ラニーニャ現象の影響により、2008年に入り降雨量が極端に少なくなり、結果として1月は、この100年で最も乾いた月となった。また、記録的な高温も急速な乾燥を後押しした。また、隣接するコロマンデル(Coromandel)地方、BOP(Bay of Plenty)地方も、ワイカト地方同様に乾燥傾向が強く、このため、これら地域での牧草の育成が阻害されることで放牧環境が悪化し、放牧酪農が主体であるNZの生乳生産に大きな影響を与えている。2007/08年度(6〜5月)のNZの生乳生産は、好調な乳製品の国際市況を背景に、各月右肩上がりで推移してきたが、この生産条件の悪化により、2008年1月の生乳生産量は初めて前年同月比4〜6%程度下回る結果となっている。

かんがい設備の利用でNZ南島の生乳生産は引き続き好調

 一方、近年、酪農生産が盛んな南島の酪農生産状況については、北島同様に乾燥傾向が強い。しかし、南島中東部に位置する主要酪農生産地域カンタベリー(Canterbury)地方では、同島の西部に沿って連なる山脈により西からの雨雲が遮られ、従来から降雨量が少ない地域でもあった。このため、この地域での酪農は、かんがい設備を利用した放牧酪農として発達しており、現在(2008年2月末時点)のところ、地域の河川流水量に大きな変化は見られず、かんがい用水についての利用規制も取られていない。このため、放牧環境は良好な状態を保っている。2007/08年度の生乳生産量(6〜1月)も前年同期比3〜6%増で推移している。

2007/08年度の生乳生産は2〜3%の減にとどまるとの見方も

 今後のNZの生乳生産見通しとして、北島の主要酪農生産地帯で乾燥が進むことで落ち込みが予想されるものの、一方で、乾乳時期を迎える5月まで残り数カ月となり、生産はすでに下降局面に入っていることから、NZ全体の生乳生産量は、年度ベースで前年度比2〜3%台の減にとどまるのではとの見方も出ている。

 NZ政府、地域行政組織、農民団体などは、ワイカト地方の干ばつに対処するための全体会合を数度開催しており、今後、干ばつに対して何らかの対策を講じるとみられる。また、地域行政組織などは、酪農家に対して1日1回搾乳の導入を積極的に促し、酪農家の人件費(好調な経済を背景にNZの失業率が3%台であるため、賃金上昇率が高く人材確保が難しい状態)、粗飼料などの購入費の軽減が図られることで、現在の高い乳価水準であれば、結果的に酪農家の収益に変化はないとしている。

 今後の気象予報として、干ばつ宣言のあった地域北島のワイカト地方などでは、一定量の降雨が期待できるとの予報もあり、平年に比べて比較的高い気温が続いていることから、牧草の生育には十分な状態である。NZにとって酪農は地域経済の中心であり、また、乳製品が最大の輸出産品であることから、今後の気象動向には高い関心が集まっている。
【横田 徹 平成20年2月29日発】
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