豪州では、2002/03年度の大規模な干ばつ、その後の「100年に一度」といわれた2006/07年度の干ばつにより乳牛の飼養頭数が大幅に減少するなど、生乳生産に対して大きな影響を与えている。一方、世界的な乳製品需要の高まりから国際価格は高水準を維持しており、これを反映した乳価の上昇で酪農家の生産意欲は高まっている。しかしながら、生産水準が干ばつ以前にまで回復するには数年を要するとみられており、高まる需要を背景に国内向けを中心とした生乳の供給不足が懸念されている。
ブリスベンなど一大消費地を抱えるクイーンズランド(QLD)州では、2008年に入っても最大の酪農生産地帯を中心に干ばつが続いており、生乳生産は前年に比べて大きく減少している。一方で、州内の生乳需要は、2010年までに年率6%で増加するとみられている。QLD州の酪農生産者団体によると、QLD州における2007/08年度の生乳生産量は、2006/07年度に記録した5億3千万リットルを大きく下回ることが予想されており、年度の需要見通しである4億9,700万リットルをも下回るとの懸念が出始めている。一方で、消費人口の増加などから2010年には5億6千万リットルの需要が見込まれることから、この不足分を埋めるために、この100年で初となる内外からの生乳調達も検討しなければならないとしている。
また、西オーストラリア(WA)州でも、生乳生産の低下による供給不足が懸念されている。WA州の酪農コンサルタント会社の試算によれば、内外の乳製品需要を満たすためには、次の2年間で8,500万リットルの生乳の増産が必要としており、その後についてもこれをさらに上回る生乳生産の確保が求められるとみている。次の2年間でこの増産分を確保するためには、単純計算で乳牛1万4千頭以上を新たに増やさねばならず、酪農家だけの努力では十分とはいえないことから、早急に内外からの投資が必要と結論付けている。
2007/08年度の豪州の生乳産量は、前年同月比で最大9%を超える減少を記録したが、乳製品国際価格を反映した乳価の上昇により、酪農家の生産意欲が高まるなど徐々に生産水準が回復傾向にある。2008年3月までの第3四半期分の合計で前年同期比5.6%減となっている。