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2008/09年度の冬穀物生産見通し、大幅な回復を予想

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作付面積が大幅増、は種期の降雨が好結果

 豪州農業資源経済局(ABARE)は6月17日、2008/09年度(7月〜6月)の冬穀物の生産見通しを発表した。これによると、小麦をはじめとする冬穀物全体の生産量は、大規模な干ばつで大幅な不作となった前々年度、前年度を大幅に上回る3,713万6千トンを予想している。2008/09年度の生産状況についてABAREでは、ニューサウスウェールズ(NSW)州、ビクトリア(VIC)州などの東部地域の穀物生産地帯を中心に、6月に入り降雨量が増えていることから、作付面積が過去10年間で2番目となる規模を見込んでいる。これら地域では、は種期となる4月から5月にかけての降雨量が平年を大きく下回っていたことから、水不足による影響が心配されていたが、は種の季節的限界となる6月に入り広範囲で降雨が記録されたことで、この懸念が払拭される形となった。
冬の作付面積の推移

小麦を含め大幅な生産回復を期待、干ばつ以前の水準に

 冬穀物の生産見通しを品目別にみると、小麦が前年度比81.6%増の2,368万トン、大麦が同34.2%増の794万2千トン、キャノーラが同56.3%増の60万5千トンと、いずれも大幅な生産回復を見込んでいる。

 州別の生産見通しでは、最大の穀物生産量を誇る西オーストラリア(WA)州が、前年度比25.1%増の1,209万5千トン、次いでNSW州が同240.7%増の1,045万1千トン、南オーストラリア(SA)州が同34.2%増の656万7千トン、VIC州が同45.2%増の550万4千トン、クイーンズランド(QLD)州が同57.2%増の182万2千トンと干ばつ以前の水準に改善する見通しとなっている。

 一方、既に収穫が終わったソルガムなど2007/08年度の夏穀物生産については、合計で347万8千トンとなり、前年度比62.7%増と大きく改善した。特に主要産品であるソルガムについては、夏場の生育期に一定量の降雨が記録されたことで、最終的には前年度比109.7%増となる269万1千トンを見込んでいる。

今後の生産を占う気象動向に注視、一方で、依然として高水準を維持する穀物飼料価格

 冬穀物生産を占う今後の気象状況について豪州気象局の予測によると、冬穀物の育成期である8月までの降雨予想が東部地域で平年水準を上回る可能性が高いとしているが、WA州では平年を下回る可能性が高いとしている。このため、大幅な生産回復とはしながらも、気象状況によっては大きく減少する可能性も含んでおり、今後の気象動向に注視が注がれている。

 一方、牛肉生産などに大きな影響を及ぼす国内の飼料穀物価格は、干ばつの被害が大きく、穀物生産が大幅に減産した2006/07年度から急激に上昇しており、2008年4〜6月現在の国内向け飼料用小麦価格は1トン当たり441豪ドル(4万5,864円:1豪ドル=104円)と依然として高水準を維持している。

 これは、2006年の同時期の価格(198ドル)の約2.2倍となる。また、家畜飼料用としての利用が高い大麦は、同351ドル(3万6,504円)と、同じく2006年同時期の価格(182ドル)と比べて1.9倍となっている。畜産業界では、飼料穀物価格の高騰による経営への影響がより深刻となっており、穀物生産の回復による飼料価格の下落が待ち望まれている。
【横田 徹 平成20年6月17日発】
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