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好調な豪州のオーガニック生産

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認定団体が報告書を発表

 豪州の代表的なオーガニック認定団体の一つであるバイオロジカル・ファーマーズ・オブ・オーストラリア(BFA)は、このたび、豪州のオーガニック産業の現状についての調査報告書Australian Organic Market Report」を発表した。

 BFAによると、今回の調査報告は、同国のオーガニック産業の全体像を明らかにした試みとしては、2004年に豪州農漁林業省(DAFF)が発表した調査報告以来初めてであるとしている。

 なお、この報告書は、BFAの委託により、ニューイングランド大学のオーガニック研究グループが独自に調査し、DAFFによる前述の報告書をベースにまとめられたものである。

 報告書のデータは、全国のオーガニック認定経営体636者からのアンケート結果から推計されたものによる。主な報告内容は次の通り。

オーガニック認定経営体は増加傾向

 2007年のオーガニック認定経営体に関する統計については、次の通り。
  • オーガニック認定経営体(農家、加工業者、販売業者など):全国に2,750件。過去5年間で年平均5.2%増加している。このうち約3分の2が農家であり、豪州の全農家戸数の1.5〜2.0%に相当する。
  • 認定経営体の州別分布割合:有効回答者の内訳をみると、ニューサウスウェールズ(NSW)州33.5%、ビクトリア(VIC)州23.6%、クイーンズランド(QLD)州17.1%と、東部3州で7割以上を占める。ほかは、西オーストラリア(WA)州10.1%、南オーストラリア(SA)州8.4%、タスマニア(TAS)州6.8%、北部準州(NT)0.5%となっている。
  • オーガニック認定農場面積:1,199万ヘクタール。このうち97%が放牧用の牧草地で、大部分がQLD州に属する。

2007年のオーガニック農産物の農家産出額は2003年比で81%増

 2007年におけるオーガニック農産物の農家産出額は、干ばつにもかかわらず、2003年比で81%増の2億3,157万豪ドル(約243億1千万円:1豪ドル=105円)と見込まれ、オーガニック生産が好調であることがうかがえる。品目別の内訳をみると、野菜が7,713万豪ドル(約80億9,865万円)と最も多く、次いで果物やナッツ類が3,595万豪ドル(約37億7,475万円)で、これら園芸部門が全体の半分近くを占め、同国のオーガニック産業をけん引している。次いで、肉用牛が3,164万豪ドル(約33億2,220万円)、穀物が2,178万豪ドル(約22億8,690万円)などと続くが、これらの品目は干ばつの影響を強く受けたことから、2003年比で肉用牛が40%減となり、穀物も24%増と全体に比べると低い増加率にとどまったとしている。

 また、肉用牛に関連して、オーガニック業界の関係者によると、「オーガニック牛肉に対する需要者からの評価は概して高いが、その評価は必ずしも一定でなく、オーガニック牛肉であっても非オーガニック市場に出回ることも少なからずあることから、品質のばらつきをなくすことが課題の一つである」とのことである。

需要に応える生産が今後の課題

 豪州のオーガニック産業は、干ばつの影響こそあるものの、食に対する関心の高まりなどを背景に、継続的な成長を遂げている。同報告書によると、同国のオーガニック市場の小売販売額は、6億2,300万豪ドル(約654億1,500万円)と見込まれ、全体に占める比率は小さいものの、近年著しく増加している。
こうした背景には、大手小売店のオーガニック市場への参入により、同製品に対する需要が加速したことがある。

 一方、2007年のオーガニック製品の輸入額は2億3,100万豪ドル(約242億5,500万円)、輸出額は3,470万豪ドル(約36億4,350万円)と推計されているが、輸入量が相対的に多いのは、同国の需要の増加傾向に対して供給面の成長が追いついていないと考えられることから、豪州オーガニック産業にとって、需要に応じるために国内生産能力を高めることが今後の課題であるとしている。
【玉井 明雄 平成20年7月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
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