牛飼養頭数は緩やかな回復を予測(豪州)
牛飼養頭数は2008〜09年とほぼ横ばい。その後緩やかに増加
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は8月11日、2008〜12年までの5ヵ年の肉牛需給予測を公表した。2008年2月4日に公表した肉牛需給予測の期中改定版である。
これによると、2008年(6月末現在)の豪州の牛飼養頭数は、前年同期比0.6%増の2,820万頭となった。豪州南部では、2008年夏期に広範囲で降水に恵まれたものの、その後、秋期には干ばつ状況に戻り、引き続き牛飼養頭数が減少傾向となる、一方、これと対照的に北部地域では、一部の地域を除き比較的気象条件に恵まれたため、2007〜08年にかけて牛飼養頭数がわずかに増加し、豪州全体の飼養頭数は2007年の水準をわずかに上回った。2009年については、気象条件の回復に従って牛群の再構築が進展する一方、2008年後半に豪州北部を中心としてグラスフェッドのと畜が増加することから、飼養頭数は横ばいとみている。2010年以降は飼養頭数が年1〜2%と緩やかに増加し、2012年には2007年比5.2%増の2,950万頭としている。なお今回の予測では前回よりも飼養頭数の回復が緩やかになったが、これは、予測期間を通じて飼料穀物価格が高水準であること、豪州南部で土地利用において穀物と酪農が競合するためであるとしている。
2008年牛肉生産は、グレインフェッドからグラスフェッドへ移行進む
2008年の牛と畜頭数は、前年比0.3%減の893万3千頭と予測している。ただし成牛については、2008年前半にグレインフェッドや豪州南部におけるグラスフェッドのと畜頭数が減少するものの、後半には豪州北部を中心としてグラスフェッドのと畜頭数が増加するほか一部グレインフェッドのと畜頭数も回復するため、前年(同0.6%増)を上回るとみている。2009年は、牛群再構築が本格化し雌牛のと畜頭数が7%程度減少するため、全体として同3.1%減の866万頭に減少する。その後は、と畜頭数は増加傾向となり、2012年には2007年比4.5%増の936万5千頭と予測している。
2008年の牛肉生産量(枝肉ベース)は、成牛と畜頭数の増加および1頭当たり枝肉重量の増加により同1.0%増の220万2千トンで、前回の予測値(212万3千トン)よりもかなり増加した。これは、豪州南部の牛群再構築が遅れたことおよび1頭当たり枝肉重量が予想以上に大きいためである。2009年は、と畜頭数の減少などにより同2.9%減の213万9千トンと減少するが、その後は回復基調となり、2012年には2007年比8.3%増の236万1千トンと予測している。
2008年の牛肉輸出はロシア、東南アジアおよびEU向けが増加
2008年の牛肉輸出は、前年比0.9%増の95万トン(船積重量ベース)と予測している。輸出先別では、北米から南アジアおよび欧州への移行が進むと同時に、種類別ではグレインフェッドからグラスフェッドへの移行が進むとみている。米国市場では、国産牛肉価格が高水準であり、また豪ドル高の進展により豪州産牛肉の優位性が小さくなるとしている。一方、ロシア市場では、南米産牛肉の輸出競争力が低下したため、これまで米国、日本および韓国向けに輸出されていた豪州産加工用牛肉がロシアに仕向けられる。さらに東南アジアおよびEU向け輸出についても、ブラジル産牛肉の輸出競争力低下に伴い増加するとしている。2009年は、日本や韓国といった北アジア市場における米国産牛肉の輸入が増加するから、同5.3%減の90万トンに減少するとみている。2010年は前年並みとなるものの、その後回復し、2012年には2007年比5.7%増の99万5千トンまで増加すると予測している。
【井田 俊二 平成20年8月20日発】
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