07/08年度の酪農経営、乳価上昇により大幅に改善(豪州)
豪州農業資源経済局(ABARE)は9月2日、2007/08年度(7〜6月)における酪農の経営状況(暫定値)を公表した。これによると、同国の酪農経営は、100年に一度といわれる大干ばつの影響により大幅な赤字となった2006/07年度から一転して、大幅な黒字が見込まれている。
2007/08年度の酪農経営状況についてABAREでは、現金売上から現金支出を控除した農家現金収入が、酪農家1戸当たり平均11万600豪ドル(約1,029万円:1豪ドル=93円)と前年度に比べ3.3倍、大干ばつ前の2005/06年度と比べても29%増と見込まれ、また、そこから労働費などを控除した農家収益は、平均2万3,700千豪ドル(約220万円)の黒字と推計している。
生産者乳価の上昇が売上に寄与
現金売上の内訳を見ると、生乳売上高は、前年度比27%増の42万6千豪ドル(約3,962万円)と見込まれている。これは、生乳生産量が減少したものの、世界的な乳製品需給のひっ迫に伴い生産者乳価が大幅に上昇したことが大きく寄与している。ABAREによると、2007/08年度における1リットル当たりの生産者乳価は、前年度を48%上回る49豪セント(約46円)と推計されている。
一方、現金支出は、前年度比7.0%増の38万6,100豪ドル(約3,591万円)としている。現金支出の内訳をみると、飼料費に次いで大きい支払利息が、借入金の増加と高い金利により大幅に増加している。また、飼料費、肥料費も前年度比でそれぞれ増加した。なお、2007/08年度における酪農家1戸当たりの借入金は、同8.7%増の51万7,900豪ドル(約4,816万円)とかなりの増加が見込まれている。
経産牛飼養頭数の減少で、1戸当たりの生乳生産量は減少
また、酪農家1戸当たりの経産牛飼養頭数については、前年度から続いた干ばつの影響などにより、前年度比8.5%減の193頭とかなりの減少が見込まれる。特に、豪州の主要酪農地帯の一つであるビクトリア州北部およびニューサウスウェールズ州南部リベリナ地域では、かんがい用水の利用制限や飼料価格の高騰などによる影響で、同飼養頭数の大幅な落ち込みがみられた。一方、経産牛1頭当たりの乳量については、生産性の低い牛のとう汰や補助飼料の給与割合の増加により、同3.2%増の5,110リットルとやや増加した。しかし、飼養頭数がかなり減少したことで、酪農家1戸当たりの生乳生産量は、同5.6%の減少が見込まれている。
今後も生産者乳価は高水準を維持、生乳生産も増加見込み
今後の見通しについて、乳製品の国際需給がタイトな状況下、豪州の乳価が今後数年間も高水準で推移すると予測される中で、酪農家の生産意欲の向上に伴う牛群再構築の取り組みが増すことから、生乳生産の増加が見込まれている。ただし、生産動向については、あくまで今後の気象条件や水利が大きく影響するとしている。
【玉井 明雄 平成20年9月3日発】
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