2008/09年度の冬穀物生産、下方修正も依然回復傾向の見通し(豪州)
2008/09年度の冬穀物生産見通しは、前回予測からやや下方修正
豪州農業資源経済局(ABARE)は9月16日、2008/09年度(7〜6月)穀物生産見通しを発表した。これによると、冬穀物の総生産量は3,537万トンと前回6月発表時の3,714万トンからやや下方修正した。
同国における小麦などの冬穀物生産は、百年に1度といわれる大規模な干ばつの影響で2006/07年度が前年度比57%減の1,761万トンと激減し、2007/08年度も前年度を上回ったものの凶作が続いた。
6〜8月は降雨不足、しかし、春先に恵みの雨
2008/09年度の生産見通しについてABAREでは、冬穀物の育成期に当たる6〜8月の間、クイーンズランド(QLD)州を除く主要穀物地域で、降水量は平年並みまたはそれ以下となり、特に8月は乾燥気候となったが、8月終わりから9月初めにかけての広範囲にわたる降雨が冬穀物にとって絶好のタイミングとなった。このため、地域間の天候状況にばらつきはあるものの、今年度の生産は依然として回復傾向にある。しかしながら、多くの地域で土壌が乾燥していることから、今回の予測を達成するには、作期後半に当たる春季におけるより一層の降雨が必要であるとしている。
小麦は前年度比で大幅な増加、前回予測からはやや減少の見込み
主要冬穀物の生産見通しを品目別にみると、干ばつの影響を受けた前年度と比較し、小麦が72%増の2,246万トン(前回6月発表時と比べ5.2%減)、大麦が32%増の784万トン(同1.3%減)、カノーラが55%増の165万トン(同1.1%減)と見込まれる。主力農産物である小麦の大幅な増加要因として、干ばつからの回復による単収の大幅な増加に加え、作付面積が前年度比9.8%増の1,355万ヘクタールと見込まれることがある。作付けの増加要因については、干ばつの翌年は、通常作付けが増える傾向にあるが、2008年前半の小麦の国際価格高騰により、さらに作付け意欲が強まったものとみられる。なお、小麦が前回予測よりやや減少したのは、6〜8月における降雨不足によるものである。
WA州以外で前回予測を下回るものの、生産者は収穫量の回復に期待
また、生産量を州別に見ると、最大の生産量を誇る西オーストラリア(WA)州が前年度比27%増の1,230万トン(前回6月発表時は1,210万トン)、ニューサウスウェールズ(NSW)州が約3倍の923万トン(同1,045万トン)、南オーストラリア(SA)州が同32%増の640万トン(同657万トン)、ビクトリア(VIC)州が同35%増の512万トン(同550万トン)、QLD州が同51%増の175万トン(同182万トン)などと見込まれている。
2008/09年度の冬穀物生産については、WA州以外の州で軒並み前回発表時を下回る見通しであるが、過去2年の干ばつの影響による大幅な減産を経験した生産者からは、収穫量の回復に期待が寄せられている。
夏穀物の作付面積は前年度比5.6%増、生産量は同18%減の見込み
これから作付けが始まる2008/09年度の夏穀物についてABAREでは、作付面積は前年度比5.6%増の112万ヘクタールと増加を見込む一方、生産量は、ソルガムの減産などから同18%減の296万トンと減少を見込んでいる。
品目別にみると、家畜の飼料として利用されるソルガムは、作付面積が前年度比4.1%減の76万7千ヘクタール、生産量は同29%減の199万トンと予測されている。生産量の大幅な減少は、記録的な高水準となった前年度の反動で単収が同26%減と見込まれることが大きい。なお、作付面積の減少要因については、QLD州南部とNSW州北部で、冬穀物の作付面積の増加から夏穀物であるソルガムをは種できる耕地面積が減少するためとみている。
一方、かんがい用水に依存した生産を行っている綿花およびコメは、作付面積がそれぞれ14万1千ヘクタール、5千ヘクタールと見込まれる。また、生産量については、綿実が38万5千トン、コメは、水利用権の割当率が小さく作付けに必要なかんがい用水を引き続き確保できない見込みから、2005/06年度生産量(100万2千トン)の4.4%に当たる4万4千トンと記録的な低水準が続く見通しである。
【玉井 明雄 平成20年9月17日発】
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