年間を通じて農業生産は好調を持続 (フィリピン)
台風災害の減少により農業生産は前年を上回る
フィリピン農務省農業統計局(BAS)は1月21日、2007年1〜12月分の農業生産状況を公表した(表1)。
農業部門全体における生産額(85年指標価格)は、前年比4.7%増の3,181億ペソ(約7,951億円:1ペソ=2.5円)となった。2007年は例年より乾期が長引いたものの、大型台風による被害が多発した2006年と比較すると、総じて農業生産は好調に推移した。
部門別の農業生産額は、作物部門が同5.6%増の1,513億ペソ(約3,782億円)、水産部門が同6.8%増の809億ペソ(約2,023億円)となり農業生産全体をけん引した。畜産関係については、家畜部門(牛肉、水牛肉、豚肉、ヤギ肉、生乳)が同2.4%増の413億ペソ(約1,032億円)と堅調に推移したほか、家きん部門(鶏肉、アヒル肉、鶏卵、アヒル卵)が同0.3%増の446億ペソ(約1,115億円)となり、前年比でマイナスが続いていた家きん部門もプラスに転じている。
生産量については、家畜部門の豚肉が同2.7%増の189万トン、生乳が同3.4%増の1万3千トンとなり、需要の伸びを反映して前年に引き続き増加傾向で推移している。また、水牛肉が同5.0%増の13万7千トン、ヤギ肉が同2.3%増の7万7千トンとなり増加に転じたものの、牛肉は同0.9%減の23万6千トンと2002年以降減少傾向が続いている。家きん部門の生産量については、鶏肉生産量が同0.6%増の121万3千トン、鶏卵が同1.5%増の33万5千トンとなったが、アヒル肉とアヒル卵については、それぞれ同8.4%減の4万2千トン、同6.0%減の4万7千トンと前年に引き続き減少傾向で推移している。
トウモロコシ生産量はかなりの程度増加
作物部門のうち、主要作物である米(もみ米)の生産量は同6.0%増の1,624万トン、トウモロコシは同10.8%増の673万7千トンとなった。大型台風による被害が目立った2006年に比べ、米、トウモロコシともに総じて天候に恵まれたことや、ハイブリッド品種の作付面積の増加などが寄与したとしている。特にトウモロコシ生産量がかなりの程度増加したことについて、フィリピン農務省(DA)は価格の上昇が生産者の増産意欲を後押ししたことも大きな要因と分析している。
また、DAはハイブリット品種の利用拡大や作付面積の拡大による増収を見込んでおり、2008年におけるトウモロコシ目標生産量についても、同約9%増の737万トンに設定する旨公表した。
小売価格の上昇による鶏肉離れを懸念
鶏肉生産量については、2004年には過去最高の123万トンに達したものの、2005年にフィリピンで高病原性鳥インフルエンザの発生が疑われたことなどにより、2005年以降の生産量は減少傾向で推移していた。フィリピンにおける食肉消費は、豚肉と鶏肉が主体であるが、この間における食肉の消費量は、鶏肉のほか水牛肉や牛肉が減少したのに対し、豚肉の消費量はわずかに増加傾向で推移している(表2)。
また、同国のブロイラー生産はタイと同様にインテグレータによる比率が高く、そのシェアはおおむね80%とされている。インテグレータの設備投資などもあり、2007年のブロイラーの飼養羽数が増加したことから、鶏肉生産量も増加に転じたものと考えられる。
鶏肉生産量は2007年に微増したものの、ブロイラー生産者組合(UBRA)は、石油価格をはじめとした諸物価高騰の影響による今後の鶏肉消費の低下に懸念を表明した。UBRAは、鶏肉小売価格の高騰により消費者の鶏肉離れが見られるとしており、さらにペソ高の進展により鶏肉輸入の増加が予想されることにも併せて懸念を表明した。
なお、昨年のマニラ首都圏における鶏肉小売価格は、第2四半期に鶏肉の供給不足もあり同10%高の1キログラム当たり110ペソ(約275 円)となり、その後も同120ペソ(約300円)前後で推移している。
【林 義隆 平成20年1月29日発】
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