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肉豚生産者販売価格が大幅に上昇(タイ)

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1月以降の肉豚生産者販売価格が大幅に上昇

 タイ農業・協同組合省農業経済事務所は、2月の肉豚生産者販売価格(生体100キログラム以上)を公表した。これによると、2月の肉豚生産者販売価格は前年同月比66.8%高のキログラム当たり53.89バーツ(約178円:1バーツ=3.3 円)となり、1月に引き続き昨年を大幅に上回った。

 同国の肉豚生産者販売価格は、大手養豚企業を中心とした生産過剰や経済停滞の影響による豚肉消費量の減少などにより、2006年第3四半期以降下落傾向が続き、昨年1月には同33.32バーツ(約110円)となった。その後、同価格は昨年7月まで生産コスト水準とされる同40〜42バーツ(約132〜139円)を下回る30バーツ台で推移し、昨年8月か以降は40バーツ台で推移していた。
肉豚生産者販売価格の推移

上昇を続ける飼料価格

 タイ養豚協会(SRAT)によれば、原油価格や飼料価格などの高騰による影響により、現在の生産コストはキログラム当たり56バーツ(約185円)まで上昇しており、今後も生産コストの上昇が予想されるとしている。タイ商務省国内取引局(DIT)の調査によると、大豆の卸売価格は、2007年1月の同11.50バーツ(約38円)から同年12月には50%高となる17.26バーツ(約57円)まで上昇し、トウモロコシの卸売価格は2007年1月の同8.06バーツ(約27円)から同年12月には4%高の同8.36バーツ(約28円)まで上昇している。今年の2月18日現在では、大豆卸売価格が同18.00バーツ(約59円)、トウモロコシ卸売価格が同8.65バーツ(約29円)となっている。

 このため、SRATなどの養豚関係者は、肉豚生産者販売価格が生産コストを下回っている状況を打開するため、農業・協同組合省(MOAC)や商務省(MOC)などの政府代表に対し、肉豚を生産原価で購入するための基金設置を要求した。SRATは、基金設置に必要な経費は2億バーツ(約6億6,000万円)で、対象頭数は約4万5,000頭を想定している。このほか、飼料価格の高騰を抑制するため飼料に対する輸入関税削減や、豚肉の政府による価格管理対象品目からの適用除外なども合わせて要求している。

 SRATなどの要求に対し、政府が設置した官民からなる豚・製品発展方針委員会(Thailand’s Pig Board)は基金設置に同意を示したほか、MOCは大豆かすの輸入関税の引き下げを検討するとしているが、価格管理品目から豚肉を適用除外することについては、今後も政府による監視が必要として慎重な姿勢を示している。なお、タイではMOCが生活に関連する商品やサービスの価格について、上限価格の設定や監視を行い政府の管理下で不当な値上げなどを防止する措置をとっている。

今年の豚飼養頭数は約853万頭と予想

 MOACは、同国における豚飼養頭数の2007年推定値および2008年予測値を公表した。これによると、2007年の豚飼養頭数は前年比17%増の約838万頭と前年より大幅に増加するとしており、特に北部と南部における飼養頭数の増加が目立っている。タイにおける豚の主要生産地は、北部のチェンマイ県、東北部のナコンパノム県、ナコンチャラシマ県、中部のチャチュンサオ県、ラチャブリ県などとなっており、このうちナコンパノム県とラチャブリ県における豚の飼養頭数は100万頭台となっている。さらに、MOACは、2008年の豚飼養頭数について全国平均で前年より約2%程度増加すると予想している。主要生産地では、チャチュンサオ県を除き飼養頭数の増加が見込まれており、全国の飼養頭数が約853万頭になるとしている。

 今年の飼養頭数は昨年を上回ると見込まれているが、昨年末以降、タイでは豚の疾病による被害が報告されている。SRATによれば、豚流行性下痢(PED)が国内で発生し既に70万頭の子豚が死亡しているため、今後一時的な豚肉供給不足が生じる可能性もあるとしている。
豚飼養頭数推移
【林 義隆 平成20年3月14日発】
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