冷凍食肉の推進キャンペーンを実施 (シンガポール)
冷凍食肉の消費拡大へ努力
シンガポールでは、4月の消費者物価指数が109.8と前年同月比7.7ポイント高、うち食品は112.6で同8.9ポイント高となるなど食品価格の上昇が目立っている。また、食肉については、4月の消費者物価指数が117.6で同11.5ポイント高となるなど、食品全体の指数を上回っている。このため、シンガポール食品獣医庁(AVA)は食肉価格の上昇に対して、2月より「Eat Well For Less, Chose Frozen meat」をキャッチフレーズにした冷凍食肉の推進キャンペーンを実施している。AVAは、冷凍食肉を推進する理由として、食材として冷凍食肉を選択した場合にはコストが15〜20%ほど節約できることなどを挙げている。また、英語、中国語およびマレー語の消費者向けパンフレットを作成し、冷凍食肉は冷蔵食肉より品質が劣っているようなことはなく、適切に保管すれば半年から1年間は品質が保持できることなどをPRして、冷凍食肉の消費拡大に努めている。
シンガポールでは2007年12月に、小売業者31社が冷凍豚肉を解凍し冷蔵豚肉と偽装していたことが発覚し大きな問題となった。これは、冷蔵豚肉の販売価格が高いことが主な理由であるが、シンガポール消費者協会(Consumers Association of Singapore)は、消費者が通常、冷凍食肉を解凍して使用するより冷蔵食肉を使用することを選択し、また冷蔵食肉の味覚が冷凍食肉より良いと認識している点を指摘している。シンガポールでは、消費者による食品への関心が高まっていることあり、このことが冷凍食肉の価格優位性だけでなく、その品質についても積極的なPRを行う背景となっている。
2007年における鶏肉、豚肉などの輸入数量は過去10年間で最大
シンガポールの食料自給率は、2006年時点で鶏卵が国内需給の約27%、魚類が同13%、野菜が同5%となっており、国内で消費される食料は海外からの輸入に頼らざるを得ない。
2007年における畜産物の輸入数量については、鶏肉が前年比15%増の16万4千トン、豚肉が同7.2%増の9万5千トン、牛肉が同13.9%増の2万8千トン、鶏卵が同9%増の6万1千トンとなり、いずれも過去10年間で最大となった。畜産物の輸入数量は、主要輸出国における高病原性鳥インフルエンザやニパウィルスなどの疾病の発生に伴い、シンガポール政府による当該畜産物の輸入停止措置などの影響を受けてきたが、近年はおおむね増加傾向で推移している。
食料の新規供給先確保に注力
シンガポールに食肉や肉・卵の加工品を輸入する場合、AVAの許可が必要となっている。2008年5月3日現在、シンガポールに食肉輸出が可能な国は25カ国で、このうち鶏肉が17カ国、豚肉が22カ国、牛肉が8カ国、羊肉が13カ国となっている。現在、シンガポールが鶏肉、豚肉、牛肉および羊肉について、条件付きながらすべての輸入を認めているのは、豪州、ブラジル、ニュージーランドおよび米国の4カ国である。日本産食肉については、牛肉のみ輸入を認めていたが、日本におけるBSEの発生により、2001年9月以降、日本産牛肉の輸入停止措置を実施している。
さらに、シンガポールは生体鶏および非加熱卵の輸入も行っているが、2008年5月現在でAVAに認可されている国外農場は223カ所となっている。このうち、養鶏農場(125カ所)とアヒル農場(54カ所)はすべてマレーシアに所在しており、採卵農場はマレーシアの20カ所、豪州の15カ所が認可されているほか、日本の採卵農場も3カ所認可されており、AVAの認定農場は合計44カ所が6カ国に所在している。
また、食料の供給先が限定されていると、価格競争力の低下や安定供給への懸念が生じることから、AVAは食肉や鶏卵などの新規供給先を確保すべく努力をしている。また、冷凍食肉の利用促進に努めることで、保存期間の長い冷凍食肉の調達先の多様化を図る狙いもある。
1月から6月2日までに、AVAはシンガポールへ輸出可能な食肉および鶏卵処理・加工施設として、18カ国の延べ85施設を承認している。国別では、ブラジルの冷凍豚肉や冷凍鶏肉などの処理・加工施設が17施設、ドイツの冷凍豚肉などの処理・加工施設が16施設などとなっている。さらに、4月22日にはフィリピンのミンダナオ地域に所在する冷凍豚肉の処理・加工施設が、フィリピンの施設として初めてAVAに承認されている。
【林 義隆 平成20年6月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:平石)
Tel:03-3583-9534