2007年の主要家畜飼養頭羽数はかなり増加 (タイ)
肉用牛の飼養頭数は過去10年間で約7割増加
タイ農業・協同組合省(MOAC)は、牛や豚などの主要家畜および鶏やアヒルなど家きんの2007年飼養頭羽数を公表した。2007年の飼養頭羽数については、飼養頭数がほぼ前年並みとなった羊を除き増加している。
畜種別にみると、乳用牛と肉用牛については、それぞれ生乳需要や牛肉需要の伸びもあり飼養頭数は増加傾向で推移してきたが、2007年については乳用牛が前年比18.6%増の49万頭、肉用牛が同10.1%増の885万頭となった。
肉用牛の飼養頭数は、97年の529万頭から10年間でほぼ7割増となった。地域別にみると、東北部の飼養頭数が450万頭で全体の5割を占め、北部が195万頭、中央部が152万頭、南部が88万頭となっている。飼養頭数は、東北部と北部が97年に比べ120%増となっているのに対し、南部では同17%増にとどまるなど地域差が大きい。
同国では、タクシン政権下において2005年から肉用牛の生産振興策として実施されていた「肉牛百万頭計画」の中止を昨年決定し、新たな肉用牛振興対策を実施することとなった。これは、農家による家畜所有を認めるなど、前計画時における問題点などを見直すとともに、肉用牛の品質改善も併せて実施する予定としており、MOAC畜産開発局(DLD)は、肉質の向上を図るため優良雄牛の精液生産を促進するとしている。また、現在、DLDには、牛や水牛などの初歩的な疾病の治療や畜産疾病の監視などを行う畜産ボランティアが全国で5万6千人登録されている。DLDは農家への適切な飼養技術などの普及を図るため、今後は畜産ボランティアに対し有機畜産などに係る技術研修を実施するとしている。
燃料費高騰で水牛の使役利用を奨励
また、水牛については前年比16.7%増の158万頭となったが、農作業の機械化に伴う役用の減少などにより飼養頭数の漸減傾向が続いており、過去10年間では飼養頭数が19%減少している。しかし、同国では燃料価格の高騰が続いていることから、DLDは燃料費の節約を図るため水牛の使役を奨励している。DLDによれば、全国の農地で使用されているトラクターなどのうち1割を水牛に代えた場合、年間で1,880万リットルの燃料が節約できると試算している。しかし、水牛を使役に供するためには若齢時からの訓練が必要なほか、畑作地における耕作では作業効率が落ちるとされており、実現に向けての問題も多い。DLDは、全国12カ所に水牛の耕作トレーニングセンターの設置を検討している。
豚の飼養頭数は大幅に増加
豚については、ここ数年、飼養頭数の増減を繰り返しているが、2007年については同30%増の930万頭となり、過去10年間でみると97年の1,014万頭に次ぐ水準となった。これは、大手養豚企業を中心とした生産過剰が主な理由とされているが、このため、タイ国内では豚肉が供給過剰となり、肉豚の生産者販売価格は2007年1月から7月まで生産コスト水準とされるキログラム当たり40〜42バーツ(約132〜139円:1バーツ=3.3円)を下回る水準で推移した。
同国では、小規模養豚経営の廃業やインテグレーターなどへの集約が進んでいるとされるが、それでもインテグレーターの飼養頭数は全体の3割程度と言われている。特に、2004年に高病原性鳥インフルエンザ(AI)が発生した後、生産者販売価格が比較的高値で推移したことが、養豚への新規参入も含めた飼養規模の拡大に繋がっている。現在、同国ではMOACが主に生産面、商務省が販売価格などを管理しているが、豚の頭数管理などについて総合的な施策を実施するため、両省による合同委員会の設置が検討されている。
鶏の飼養羽数は過去10年間で最大
鶏やアヒルなどの家きんについては、2004年1月発生したAIの影響により、飼養羽数の増減を繰り返して推移している。2007年の飼養羽数は、鶏が同53.6%増の2億8,313万羽、アヒルが同19.7%増の2,495万羽となり、鶏の飼養羽数については過去10年間で最大となった。
同国におけるAIの発生状況は、2004年が2回、2005年が1回、2006年が1回、2007年が1回となっている。
また、今年に入ってからは1月下旬に同国北部のナコンワサン県およびピチット県でAIの発生が確認され、約5万6千羽の家きんが殺処分されている。しかし、その後はAI発生が3カ月以上確認されないとして、タイ政府は5月に清浄化宣言を行っている。
【林 義隆 平成20年8月26日発】
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